Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
プリオンが安定に伝播するには、細胞分裂に伴い、プリオン凝集体が娘細胞から母細胞に安定に流入する必要がある。その分子機構の解明は蛋白質の異常凝集体の伝播阻害につながり重要な研究課題であるが、そのメカニズムには不明な点が多い。我々は、まず、これまでに新規に開発した網羅的なスクリーニングで見出してきた、タンパク質凝集体の不均等分配に関わると示唆される候補遺伝子の破壊酵母株を作成した。それらの破壊酵母株を用いて、プリオンの伝播に必須なHsp104シャペロンの阻害剤である塩酸グアニジン存在下において、酵母のプリオン状態[PSI^+]が非プリオン状態である[psi^-]に変換される効率を調べた。その結果、いくつかの遺伝子破壊酵母株では[psi^-]状態への変換効率が低下していた。また、娘、母の各酵母において、酵母プリオン蛋白質Sup35の凝集体(プロパゴン)の数を調べたところ、細胞分裂に伴い娘細胞へと流入するプロパゴンが野生型酵母に比べて増加している遺伝子破壊酵母株が存在した。以上の結果から、プリオン様のタンパク質凝集体の不均等分配に関わることが示唆される遺伝子が複数、同定されたと考えられる。一方、プリオン伝播にはSup35オリゴマーが重要な役割を担う。そこで、遺伝子破壊株におけるSup35オリゴマーの挙動を、娘細胞、母細胞における蛍光退色後回復測定実験から検討した。その結果、自発的な拡散による流入よりも、娘細胞から母細胞への輸送によって不均等分配がなされている可能性が示唆された。
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http://www.brain.riken.jp/jp/m_tanaka.html