Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
南海トラフ付加体内部断層や東北太平洋沖地震における浅部の滑りなどを解明するためには、岩石やその摩耗物の摩擦特性に関する理解が必要である。この目的のため興味深い摩擦実験が多数行われているが、結果を定式化し背後にある物理過程を同定することは未だ出来ていないようである。本研究課題の目的は、主に理論的手法により、フラクタル多孔媒質としての断層ガウジの摩擦特性を解明することである。とくにすべりの安定性の決定に重要な役割を果たす、定常状態摩擦係数の速度依存性を解明することを目指している。粒子一つ一つをモデル化した離散要素シミュレーションと理論によるアプローチで、摩擦係数が断層を特徴づける様々な条件によって変化する仕掛けをその物理的原因まで含めて明らかにする。まずガウジ内部でのエネルギー散逸率が摩擦係数を決定することを利用し、平均場的な近似と粒子ダイナミクスに関するある仮定に基づいて摩擦係数を計算した。その結果は以下のように要約される。i)摩擦係数は各々異なる物理過程に起因する二つの項の和で書ける:すなわち、粒子間摩擦による散逸に起因する項と、粒子の非弾性変形による散逸に起因する項である。ii)第一項は粒子間の摩擦係数ほぼそのままであり、潤滑物質や粒子形状(回転のしやすさ)などの影響を強く受ける。iii)第二項は粒子の再配置率に比例するため、密度が低いほど(膨張するほど)強くなる。一般にガウジ層はすべり速度とともに膨張するので、第二項は本質的に速度強化的である。なお粒子の非弾性変形によるエネルギー散逸過程は粒子形状・岩石種・潤滑物質の有無にはさほど依存しないと考えられる。そうだとすると第二項のもたらす速度強化性は普遍的である。これらの理論的結果は実験やDEMシミュレーション結果とも整合的である。
3: Progress in research has been slightly delayed.
当初の計画においては、摩擦発熱による化学反応の影響まで具体的に取り込んで、摩擦特性のシミュレートまでする予定であったが、それは年度中には果たせなかった。予定では、平成23年度の前半に理論の定式化を終え、年度後半に具体的化学反応のモデル化に取りかかる予定であったが、理論の定式化に予想以上の時間がかかり、結局年度のほとんど全てを理論の定式化にあてることとなった。
粉体層の摩擦特性(とくにすべり速度依存性)を記述する理論モデルはその大枠が完成した。ただし本理論はまだ完全に閉じた形式となっておらず、すべり速度と粉体層の膨張を記述する式をインプットとして必要とする。この部分を第一原理的に定式化し、本理論をself-containedな閉じた理論とすることは優先度の高い課題であろう。また本理論では摩擦熱と化学反応を取り込むことは出来なかったが、これらの要素を理論に取り込むことは、実際の断層における化学反応の影響の評価を定量的に行うために重要である。今後はこれら二つの点を中心に研究を更に推進して行く予定である。
All 2011 2010
All Journal Article (5 results) (of which Peer Reviewed: 5 results) Presentation (5 results)
Pure and Applied Geophysics
Volume: 170 Issue: 1-2 Pages: 3-11
10.1007/s00024-011-0409-9
Geophysical Research Letters
Volume: 38 Issue: 17 Pages: n/a-n/a
10.1029/2011gl048530
Journal of Physics : Conference Seriese
Volume: 319 Pages: 12011-12011
10.1088/1742-6596/319/1/012011
J.Phys.Conf.Ser.
Volume: 258 Pages: 12006-12006
Prog.Theor.Phys.Suppl.
Volume: 184 Pages: 143-152
110007703084