Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
今年度は、多孔性構造を利用したゲスト分子および機能性分子ユニット間の相互作用と電子状態の制御を目的として、多孔性錯体材料{Fe(pz)[Pt(CN)_4]G}(1;pz=pyrazine,G=guest molecule)を基軸化合物として研究を推進した。昨年度までに、化合物1をヨウ素蒸気に曝すと、ヨウ素がPt(II)に酸化的に付加したヨウ素付加体が得られ、ヨウ素含有量によりスピン転移温度を300-400Kの間で連続的に変化させることに成功した。今年度は、機能性分子ユニットであるピラー配位子pzの運動とスピン状態の相関を検討した。中性子準弾性散乱および固体^2H NMRスペクトルより、10^<-13>-10^<-3>sのタイムスケールでpzの回転運動の温度変化を追跡した結果、pzは高スピン状態の細孔中で4-fold jump motionをしているが、低スピン状態になると骨格構造とpz間の立体反発により、その回転速度が3桁以上遅くなることを確認した。このpzの回転による回転エントロピーがゲスト吸着によるスピン状態変換に寄与することも、理論的に説明された。また、Fe(II)をCo(II)に変えた類縁体{Co(pz)[Pt(CN)_4]G}では、Co(II)周りの対称性変化に伴って光吸収が変化し、特にアルコール類に対して特異的な応答が観測された。さらに、ピラー配位子をCholest-5-en-3-yl-4-pyridinecarboxylateに変えて疎水場を導入した化合物では、ハロゲン化アルキルに対して特異的に応答することを見出した。機能性分子ユニットを合理的に集積して相互作用空間を作り上げることで、ゲスト分子によるスピン状態の変換に成功し、詳細な構造解析と理論計算からその機構を解明した。これらの結果を基に、機能性分子ユニットを変換することで、より特異的なゲスト応答性の発現にも成功した。
1: Research has progressed more than it was originally planned.
本研究では、(1)化学的刺激による物性制御および(2)機能性分子ユニットによる化学的機能の制御、を目的とする。(1)では、細孔内の配位子の運動解析と理論計算により、ゲスト吸脱着と骨格構造のスピン状態を連動させるだけでなく、その機構を解明した。また、化合物の固相反応を利用したスピン転移温度の制御にも成功した。(2)では、機能性分子ユニットによる特異なゲスト応答性の発現など、当初の計画通りの成果が得られた。
触媒能の発現に関しては一応の評価はできたが、主に粒子表面が機能しており、細孔内部を有効に利用することはできなかった。今後は、本研究で見出したヨウ素付加体の固相反応の有機合成への応用を検討する。
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http://www.scc.kyushu-u.ac.jp/Sakutaibussei/index.html