Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究では、遺伝子発現の量やタイミングを変えるゲノム変異について、周囲の環境の変化による選択圧と、人類が高度で複雑な社会構造を構築することで環境を変化させたことによる選択圧、それぞれの指標とするため、代謝系と社会性関連脳神経系の遺伝子群のプロモーターやエンハンサー領域の単純配列におけるSTR反復多型等の、進化速度の速いゲノム変異を世界中の現代人集団において解析する。検出されたゲノム変異が起きた時代とその時の変異検出集団の地理的分布、またゲノム変異の発生頻度を、「代謝系」と「脳神経系」のそれぞれの遺伝子群において比較する。
本研究は、グルタミン分子が連続して連なっているポリグルタミン(polyQ)構造を有するタンパク質9種類が神経変性疾患(トリプレット・リピート病、ポリグルタミン病、polyQ病)の原因になっていると同時に、polyQ反復数の多型が脳神経系の発達過程における個体差を生み出す源になっていると考えられることに焦点をあて、新学術領域「出ユーラシア」プロジェクトにおける、人類進化特有の現象の解明に貢献することを目指している。さらに、人類の進化が他の動物の進化と異なる最たる点は、自ら生態学的地位(ニッチ)を構築・改変して次世代以降の進化に影響することであり、本新学術領域の理論的支柱でもある。そこで、まず公募研究としてpolyQが細胞内でタンパク質や核酸と結合する性質を持つ点に着目し、polyQ配列をもつタンパク質とpolyQに結合するタンパク質それぞれのタンパク質間相互作用における情報を取りまとめた。その結果、PolyQ結合タンパク質であり、スプライシング調節機能をもつPQBP1、および、発生過程の神経細胞の神経突起の長さとpolyQの長さに逆比例した神経突起を発生過程で生じさせるハンチンチン・タンパク質(HTT)において、別々の反応経路によって、polyQ長の変異が神経突起長の変異を生み出す可能性を示した。さらに、polyQ配列における反復数多型を手掛かりにして、特定のpolyQ配列における人類特有の選択圧を明らかにするために、long-read HiFi配列技術を確立することを目指して取り組んでいる。加えて、本新学術領域の全体集会のやり取りを通じ、三元ニッチ構築モデルの実証的研究の必要性を認識するにいたり、実証的研究を行うため、「ニッチ」という用語の意味や使用法の確認、個体群生態学の集団サイズ変化モデルを人類集団に適用してきた研究史の調査、そして課題を浮き彫りにした。
3: Progress in research has been slightly delayed.
2022年度には、公募研究計画において、long PCRの条件を決めた4つのhapSTR座位(1.5kb~10kb)について、小ロットのパイロット実験用のPCR増幅をした段階まで実施した。そのためには、これまで用いてきたlong PCR用プライマー配列の端に目印をつけるためのアダプタ配列を組み込み、さらに安定化のための修飾を施したプライマーを用いたlong PCRを実施する必要があるのであるが、実験過程でこれまでのPCRとは最適条件が異なることがあきらかになり、その対応に再度条件検討を行うことになった。また、2022年度途中、研究代表者本人の怪我などにより実験室作業からの離脱を余儀なくされた。このようなことが理由としてあげられる。
2023年度には、、PacBio社のHiFi lead技術により、polyQ領域とその近傍領域を一つながりで相判定できるか、少数個体のパイロット実験で確認する。さらに、2022年度途中で、ポリグルタミン病のうち、1疾患(SCA1)の責任遺伝子のpolyQ座位について、反復数を同定するためフラグメント解析を加えることになり、世界4大陸から約200個体分について、実験を行うことが出来た。2023年度はその結果を解析し、long-read HiFi配列とあわせることで確実に正確な型判定を行う。
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All Presentation (2 results) Book (2 results)