Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究課題では、水圏における水分子の動的様態を分子動力学シミュレーションを用いて評価する手法を開発し、それを実験計測へ知見提供することを目指すものである。水圏機能材料の機能を決める上で不凍水、中間水、自由水などの界面水の重要性は指摘されている。理論的には、高分子の影響を受けた水分子が持つ水素結合の結合先・本数の起こり得る全ての状態を分類することが本質であり、その比率・ダイナミクスについての解析から、「水圏」における水分子の状態の全貌を明らかにする。
水圏機能材料における水分子は材料との相互作用によりバルクとは異なる性質を示し機能発現に寄与する。そこで界面近傍のミクロな分子描像の獲得は生体機能性・環境調和性の設計のために重要である。ただし水和水の研究の多くは様々な実験から、「不凍水」や「結合水」などの分類がされてきたものの、巨視的な描像に留まっていた。本研究では、分子動力学シミュレーションを用いた理論研究により、界面近傍にある水分子同士がどのように協奏し構造を変化するかを解明することにより界面水の分子描像を明らかにした。特に水分子の水素結合相手となる高分子官能基のアクセプター酸素に着目した詳細な水素結合状態の整理をおこなった。その結果、優れた血液適合性を示す高分子材料であるpoly(2-methoxyethyl acrylate)(PMEA)のメトキシ酸素と水素結合した水分子は水素結合の短時間での破断が起こりやすいが、その一方で10 ps程度の時間では拡散することなくアクセプター酸素近傍に滞留していることを見出した。さらに同様の解析をDipalmitoyl phosphatidylcholine(DPPC)から構成される脂質二重膜近傍の水分子に応用した。脂質二重膜近傍に存在する水分子は脂質頭部の親水基との相互作用を受けバルク水とは異なったダイナミクスを示すことが分光測定などにより議論されてきた。 本研究では、脂質二重膜近傍に存在する水分子の状態はコレステロールによってどのような影響を受けるかを理解することを目指した。その結果、水和水のダイナミクスがコレステロールの存在による膜状態の変化に伴い大きく変化することを明らかにした。これらの分子描像は実験ではアクセスし難い知見であり、今後より多様な水圏機能材料への応用と水和水描像の包括的解明が期待できる。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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ACS Polymers Au
Volume: 3 Issue: 6 Pages: 437-446
10.1021/acspolymersau.3c00013
The Journal of Chemical Physics
Volume: 158 Issue: 17 Pages: 174901-174901
10.1063/5.0148753
Volume: 156 Issue: 15 Pages: 154108-154108
10.1063/5.0087310
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20230508_2