Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
準結晶に長距離の並進対称性はないものの、いわゆる補空間まで含め結晶だった系を3次元空間で切り取った波数が意味のある物理量になっていることは論理的には不思議ではない。しかし、研究代表者が進めてきたCe近似結晶や過去の研究でもフェルミ準位近傍における状態密度の抑制が観測される例は並進対称性の欠落した準結晶特有の状態と考えられている。そしてこの中で実空間情報である軌道対称性の役割は不明である。本研究課題では希土類準結晶・近似結晶の偏光制御内殻および価電子帯光電子分光による電子構造観測を通じて電子物性における波数および軌道対称性の役割を明らかにすることを目的として研究を進める。
Au-Ga-Ce系近似結晶の硬X線Ce 3d内殻光電子分光を2つの組成について行ったところ、両者とも4f電子状態が極めて局在的なスペクトル形状だが、局在的な4f不完全殻を有するサイトの内殻光電子スペクトルに特徴的な3d94f1終状態多重項構造が大きくぼやけていた。一方、chemical disorderのない2元系のCd-Ce近似結晶の内殻光電子分光では明確な3d94f1終状態多重項構造が観測された。これにより、Au-Ga-Ce系近似結晶におけるchemical disorderが本質的にCe 4f電子構造ひいては価電子全般に影響を与えていることが判明した。さらに我々は極低エネルギー光電子分光でフェルミ準位近傍の電子状態を研究した。準結晶においてはこれまで価電子帯光電子分光でフェルミ準位ごく近傍におけるスペクトル強度の抑制が報告されているがAu-Ga-Ce系においてもわずかであるが同様な状態が観測された。加えて、価電子帯光電子スペクトルでは組成の違いによるわずかな形状変化が確認されたが、これは価電子数の変化によるリジッドバンドシフト的な解釈で理解可能であった。また、Au-Ga-Ce系およびCd-Ce系近似結晶の両者についてCe 3d-4f共鳴光電子分光を行ったところ、やはりCe 4f電子状態は非常に局在的であることが判明した。加えて、Ce 3d端X線吸収スペクトルでは内殻光電子スペクトルで見られたようなぼやけがAu-Ga-Ce系でも観測されなかったが、これはマーデルングポテンシャルの乱れが吸収過程においては始状態と終状態で等しいためキャンセルされたからと結論づけた。さらに、磁性近似結晶と言えるAu-Al-Gd, Au-Al-Tb近似結晶の光電子分光も行い、磁気相図のパラメータとされる平均価電子数によってスペクトルが系統的に変化していることを見出した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of the Physical Society of Japan
Volume: 印刷中
New Physics: Sae Mulli
Volume: 73 Issue: 12 Pages: 1058-1061
10.3938/npsm.73.1058
Volume: 73 Issue: 12 Pages: 1062-1066
10.3938/npsm.73.1062
Physical Review B
Volume: 108 Issue: 16
10.1103/physrevb.108.165121
http://decima.mp.es.osaka-u.ac.jp/