Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
蓄電池は二酸化炭素排出量の削減、エネルギーの高効率利用など持続可能社会の実現への鍵となっており、特に高安全性、高耐久性、高出力が期待される全固体リチウム電池が注目されている。本研究では電子導電性に優れたルテニウム系正極材料に着目した。全固体電池の高出力化を実現するために、ルテニウム系正極材料の全固体電池への展開、正極コーティングによる高出力化によるバルク型全固体電池の特性向上、高容量高出力正極材料の創出のための設計指針の確立を目的として研究を行う。
本研究では、高安全性、高耐久性が期待される全固体電池の高出力化を実現するために、電子導電性に優れたルテニウム系正極材料に着目し、ルテニウム系正極材料の全固体電池への展開、正極コーティングによるバルク型全固体電池の特性向上、高容量高出力正極材料の創出のための設計指針を明らかにすることを目的として研究を行った。令和4年度は研究計画に基づき、ルテニウム系の正極材料としてLi2RuO3とMn固溶Li2RuO3を、酸化物系の固体電解質としてガーネット型のリチウムイオン導電体を選択し、共焼成による正極/固体電解質複合体の作製を試みた。X線回折測定およびEDX組成分析の結果、700℃以上で、固体電解質中の構成元素と正極中のルテニウムとの間で副生成物が生成することが分かった。EDX分析の結果、ルテニウム系正極材料および固体電解質中の主要な構成元素の相互拡散は見られていないことから、正極材料と固体電解質粒子が接触する界面において、副生成物が生成したと考えられる。一方で、正極材料と固体電解質間の焼結は十分には進行していなかった。1000℃での共焼成後の正極/固体電解質複合体試料では焼結は進行していたが、複合体試料のX線回折図形ではルテニウム系正極材料および固体電解質に由来する反射は見られず、主に副生成物の反射が見られた。EDX組成分析の結果、正極材料と固体電解質の構成元素の相互拡散が見られた。そこで、電極/電解質界面での副反応を抑制するために、正極材料と固体電解質の間にバッファーとなる界面層の導入を検討した。X線回折の結果、界面層を導入により電極と電解質材料間では副反応に起因する副生成物は見られなかったことから、正極/固体電解質界面にバッファーとなる界面層を導入することで、ルテニウム系正極材料と固体電解質間の副反応を抑制することに成功した。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
令和4年度はルテニウム系正極材料の全固体電池への展開を進めるために、ルテニウム系の正極材料を用いて、電極/固体電解質複合体の作製を試みた。共焼成の条件および問題点を検討した。界面層の導入により、ルテニウム系正極材料と固体電解質界面での副反応を抑制することが出来た。一方で焼結が十分に進行していないため、ホットプレスやスパークプラズマ焼結法(SPS)による焼成も検討した。SPS法での焼結では正極材料中のルテニウムの還元が見られたが、正極材料の組成を検討することで、ルテニウムの還元を抑えることが可能であることが分かった。また、領域内共同研究により異なる固体電解質材料でも電極/固体電解質複合体の作製と電気化学特性の評価を行い、ルテニウム系正極材料の全固体電池正極材料としてのポテンシャルを確認した。以上のことより、研究はおおむね順調に進捗していると考えられる。
令和5年度は令和4年度に引き続き、正極/固体電解質複合体の作製を進める。、焼結性の向上に向けて正極材料および固体電解質の粒子径を制御、評価を行い、焼結性との関係を明らかにする。また、固体電解質の組成を検討し、焼結性への影響を明らかにする。高温条件でのX線回折測定を行い、副反応の生じる過程を明らかにし、より良好な界面が構築される界面層の検討を行う。正極/固体電解質複合体を用いた電池を作製し、電気化学評価を行い、出力特性の向上および高容量化に取り組む。これらの検討結果を基に、高容量型の正極材料についても、正極/固体電解質複合体の作製へ展開し、全固体電池正極材料としての適性を評価する。