Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
植物の軸性器官は成長しきったあとにはほとんど動けなくなるという制約の中で、屈曲や回旋といった発生に伴う運動を通して取り得る最適な環境に自身の器官を置く。しかし、屈曲についてはそれが地上部でも地下部でも偏差成長によって駆動されていること、またその分子機構も大枠が明らかになりつつあるのに対し、回旋についてはその駆動は不明である。最近、植物の根は外部から入力される明瞭な刺激のない状況でも、散発的に先端の回転を繰り返すことが分かってきた。そこで、この回転が回旋の駆動に寄与するのではないかと考えた。そこで、根の回転を引き起こす細胞動態を探究し、根の回転が根の運動にどのように寄与するのかを検討する。
本年度は、昨年度中に進展が見られた水耕栽培系を確立し、系中でのシロイヌナズナの根の観察を行った。その結果、予想外なことに、そもそもシロイヌナズナの野生型の根は水耕栽培系では二次元的な首振り運動を示していなかった。一方で、spr1-3などの細胞が斜行伸長し根が回転する変異体では首振り運動が見られた。ただし、首振り運動は螺旋成長・回旋運動と対応する現象とは限らないため、証拠としては不十分である。そこで、根の先端運動の追跡に注力した。本年度は、まず水耕栽培中の根の先端を三次元的に追跡できる観察系を確立し、いくつかの系統において実際に、シロイヌナズナの根の三次元動態を解析した。結果として、シロイヌナズナの野生型Col系統の根は螺旋成長を示すものの、その速度はゲル中・ゲル上に比べると非常に遅いこと、またLer系統の根はそもそも単純な螺旋成長を示さないことも明らかになった。一方で、回転の変異体であるspr1-3は水中でも螺旋成長を示していた。なお、根の回旋運動が野生型でも明瞭な外部刺激なしに見られた場合に実施することを計画していた、根の回転と回旋の関係についてのシミュレーション研究を停止した。本研究では先行研究で想定されていたように、明瞭な外部刺激がない場合にも根が回転・回旋する理由の考察のために計画していたものだが、回旋がゲルとの接触刺激によって生じる場合にはそもそも仮定が誤りとなるためである。以上の結果は、回転が回旋の駆動力となり得ることが示しており、また同時にゲル中・ゲル上での根の螺旋成長が、摩擦等によるゲルと根の間の相互作用で引き起こされているものであることを示唆している。これらの結果は従来のシロイヌナズナにおける回旋研究に一石を投じるものである。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2024 2023
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 2 results) Presentation (10 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results)
Plant And Cell Physiology
Volume: 64 Issue: 11 Pages: 1262-1278
10.1093/pcp/pcad105
Journal of Plant Research
Volume: 137 Issue: 1 Pages: 143-155
10.1007/s10265-023-01503-2