脳卒中患者の上肢回復過程における使用行動-身体意識-脳の変容機構の包括的理解
Publicly Offered Research
Project Area | Hyper-adaptability for overcoming body-brain dysfunction: Integrated empirical and system theoretical approaches |
Project/Area Number |
22H04763
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Complex systems
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
出江 紳一 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (80176239)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
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Keywords | 脳卒中 / 学習性不使用 / 身体意識 / 身体特異性注意 / fMRI |
Outline of Research at the Start |
脳卒中後の上肢リハビリテーションにおける問題に学習性不使用がある。我々はこれまでに、身体特異性注意の測定法を開発し、慢性期の学習性不使用を身体意識の側面から計測した知見を得た。さらに、公募班1期では発症から慢性期までに至る身体特異性注意、上肢使用頻度の長期的変化とこれらの関係を明らかにした。しかし、身体特異性注意や麻痺肢使用行動の神経基盤は不明である。本研究では、脳卒中患者の上肢回復過程における脳の機能・構造ネットワークの可塑的変化を安静時fMRI・DTIで計測する。また、使用頻度と身体特異性注意をそれぞれ加速度計と心理物理的手法を用いて縦断的に計測し、これらの因果関係と神経基盤を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
脳卒中後の上肢麻痺の回復に使用頻度が重要とされるが,臨床上の大きな問題に学習性不使用がある. 不使用の要因は多岐にわたるが,身体意識の変容が近年注目されている.我々はこれまでに,身体特異性注意の測定法を開発し,慢性期の学習性不使用を身体意識の側面から計測した初めての知見を得た.さらに,発症から慢性期までに至る身体特異性注意,上肢使用頻度および上肢機能の長期的変化とこれらの関係を明らかにした.しかし,上肢使用頻度に関連する脳の機能・構造や身体意識を高める方法は明らかではない.本研究では,亜急性期脳卒中患者を対象とし,上肢回復過程における脳の機能・構造の可塑的変化をfMRIとDTIを用いて計測した.さらに,上肢使用頻度と上肢機能を,それぞれ加速度計と臨床評価指標であるFMAにて計測し,上肢回復過程における脳機能・構造と使用行動および機能の関係の解明を目指した. 結果,使用行動と機能の回復には異なる脳領域・神経路が関連することを明らかにした.この結果は,上肢の使用行動と脳機能・構造との関係について新たな知見をもたらし,脳卒中後の上肢使用を促進するリハビリテーション戦略の構築に貢献する可能性がある.また,肢体不自由者における四肢使用頻度と身体意識の関係をより深く理解するために,下肢切断患者の義足への身体特異性注意を測定し,歩行獲得過程における身体特異性注意の使用依存性の増加を明らかにした.更に,身体意識の一つである身体所有感の操作が脳卒中患者の模倣運動練習の効果に及ぼす影響を検討し,麻痺手の身体所有感の増加が模倣運動練習の効果を促進することを明らかにした. これらの成果は,脳卒中患者や切断患者の知見を糸口として肢体不自由者における身体意識と機能・行動の関係を多角的に理解することに寄与するものと考える.以上の研究成果の論文化も着実に進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するため、脳卒中後の上肢麻痺回復過程において,使用行動と機能の回復には異なる脳領域・神経路が関連することを明らかにした.この結果は,上肢の使用行動と脳機能・構造との関係について新たな知見をもたらし,脳卒中後の上肢使用を促進するリハビリテーション戦略の構築に貢献する可能性がある.さらに,下肢切断患者の義足への身体特異性注意を測定し,歩行獲得過程における身体特異性注意の使用依存性の増加を明らかにし,肢体不自由者の回復の原理を身体意識の側面から深く理解する基礎的知見を得ることに成功した.前者は論文投稿準備中であり、後者の成果は国際誌に原著論文として報告することができたことから,概ね順調に進展していると考えた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られたデータを基にして、行動指標と関連する脳機能・構造ネットワークを明らかにするためのより高度な脳画像解析を行う。脳卒中後上肢麻痺を呈した患者を対象とした上肢機能と上肢使用頻度(両手関節に加速度計を装着し、対健側比を麻痺手の使用頻度と定義)に関連する脳活動領域・脳構造の同定に関して得られた成果を学会にて発表する(演題登録済み)。さらに、これらの内容に関する論文執筆も進めているため本年度で論文投稿する予定である。加えて、心理物理学的手法で取得した麻痺手に対する身体特異性注意のデータと脳画像データ(fMRI、DTI)をより詳細に解析することにより、麻痺手の身体特異性注意の神経基盤を明らかにする。脳の損傷領域を解析する手法も試みており、脳の損傷領域と身体特異性注意に関する知見も得られるよう解析を進める。得られた結果を取りまとめ学会発表・論文執筆を行う。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)