体性感覚入力欠損後の運動機能回復を支える大脳適応機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Hyper-adaptability for overcoming body-brain dysfunction: Integrated empirical and system theoretical approaches |
Project/Area Number |
22H04791
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Complex systems
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
横山 修 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主任研究員 (60455409)
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Project Period (FY) |
2022-06-17 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
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Keywords | 体性感覚障害 / 運動機能障害 / 一次運動野 / 一次体性感覚野 / サル / 体性感覚 / 運動 / 脳損傷 / 機能回復 / 皮質脳波 / 体性感覚麻痺 |
Outline of Research at the Start |
体性感覚は外界に関する触覚、自分自身の身体の状態に関する固有感覚、脊髄反射の生成などを介して感覚受容だけでなく運動遂行にも重要な役割を果たしている。本研究では、上肢の体性感覚情報の中枢神経系への入力を介する頸髄後根を切断することによって上肢の体性感覚情報の中枢神経系への入力が選択的に損なわれた体性感覚麻痺麻痺モデルサルを作製し、その運動機能回復過程において大脳皮質運動野・体性感覚野で起こる神経活動の再編過程を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
体性感覚は運動制御に不可欠な役割を果たしている。本研究では、脊髄後根を切断することによって体性感覚情報の中枢神経系への入力が選択的に損なわれた体性感覚障害モデルサルを作製し、その運動機能と大脳運動関連皮質および体性感覚皮質の神経活動を縦断的に記録・解析することによって、中枢神経系への体性感覚情報入力の欠損によって生じた運動障害からの機能回復を支える大脳皮質活動の適応機構を明らかにすることを目的としている。頸髄後根の切断直後、上肢の到達把持運動が著しく障害され、また、大脳一次運動皮質および一次体性感覚皮質において運動に付随する高ガンマ活動の亢進が観察された。運動パフォーマンスは約2週間で切断前と同程度のレベルまで徐々に回復し、大脳一次運動皮質および一次体性感覚皮質の高ガンマ活動も同様の時間経過を辿って切断前と同程度のレベルまで低下した。こうした大脳運動皮質および体性感覚皮質における活動強度の変化が運動機能の回復に寄与している可能性がある。情報の劇的な欠損に対して大脳が活動を再編成することによって適応する過程の一端を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに、2頭の動物に対して後根切断手術を実施し、体性感覚情報入力欠損後の上肢運動機能が回復するまでの行動データ、筋活動データ、脳活動(皮質脳波)データの取得を完了した。上肢到達課題の各段階の達成に要した時間を解析することによって、運動機能の回復過程を定量化し記述することができ、2頭で非常によく似た時間経過を辿って運動機能が回復したことを確認できた。また、上肢の15箇所から記録した各筋活動データを解析することによって、その強度および時間パターンが運動機能回復過程において呈した変化を明らかにすることができた。さらに、一次体性感覚野、一次運動野、運動前野の計30箇所から記録した皮質脳波が運動機能回復過程においてどのように変化したかを解析することによって、運動機能の回復と相関して変化した脳活動成分(高ガンマ活動)およびそれが現れたタイミング(運動開始直前)と部位(一次体性感覚野・一次運動野)を同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、サル2頭からの取得を完了したデータの解析をさらに進める。各モダリティ(運動機能、筋活動、大脳活動)内の関係に加えて、異なるモダリティ間の関係を明らかにすることを目指す。具体的には、(1)筋活動間の協調作用の変化によって運動機能の変化を説明する。(2)大脳運動領域の活動と大脳体性感覚領域の活動の連関の変化を明らかにする。(3)大脳運動領域・体性感覚領域の活動変化と筋活動の変化の関連を統合的に理解する。これらの目的を達成するために、数理統計学的な解析法、機械学習を用いた解析法を上記の多モダリティデータに適用する。具体的には、非負値因子分解による筋シナジーの解析、主成分分析を用いた脳活動データ次元削減による脳状態変化の解析、コヒーレンス解析やデコーディング解析、グレンジャー因果解析を用いた大脳皮質領域間、大脳―筋間の機能的結合および情報の流れの解析などである。こうした解析方法を駆使することによって、体性感覚情報入力の欠損に対して、大脳の運動・体性感覚関連脳領域ネットワークの活動がどのように変化し、正確かつ効率的な運動能力の再獲得を可能としているかを明らかにする。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)