Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
亜鉛はヒトの体内において鉄に次いで含量の多い必須微量金属元素であり、その多くがシステイン残基のSH基を介してタンパク質に結合している。我々は最近、タンパク質のチオール基に付加するイオウ原子(サルフェン硫黄と呼ぶ)が、亜鉛結合タンパク質のモデルであるメタロチオネイン-3(MT3)中に保持されていることを明らかにした。そこで本研究では、サルフェン硫黄がMTタンパク質のレドックス制御において重要な役割を担っていると予想し、MTのレドックス制御機構におけるサルフェン硫黄の役割と、亜鉛の結合と遊離に関わる分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。
昨年度は、メタロチオネイン3(MT3)をモデルタンパク質として使用し、サルフェン硫黄のタンパク質への亜鉛の結合・遊離のメカニズムへの関与と、チオレドキシンシステムを介したレドックス制御機構の存在を明らかにした。一方、MT分子種はそのダイナミックな分子構造から、結晶構造解析が困難であることが認識されており、成功例が少ない。そこで今年度は、サルフェン硫黄を含んだMT分子種の3次元構造解析については、統合計算ソフトMOEを用いて詳細な分子モデリング解析を行った。すなわち、MT分子種に関する既存の3次元構造のデータベースを基に、システイン残基をシステインパースルフィドに変換した変異体解析を行い、サルフェン硫黄がタンパク質全体の構造に対して無理なく保持できるかを検証した。その結果、MT1、MT2、MT3のいずれにおいても、MT分子種の立体構造はサルフェン硫黄の化学修飾(20個/分子)条件下においても問題なく保たれていた。更に、MT3 の分子内に存在する特徴的なzinc/thiolateクラスター構造についても、パースルフィド型であれば維持でき、ポリスルフィド型になるとクラスター構造が維持できないことが判明した。また、サルフェン硫黄の有無におけるタンパク質の熱安定性スコア値と金属親和性スコア値をシミュレーション計算によって求めたところ、全てのシステイン残基にサルフェン硫黄がそれぞれ1つ付加したパースルフィド型のMT3が最も熱安定性が高く、亜鉛親和性も強いことが分かった。更に、サルフェン硫黄はMT1、MT2、MT3のいずれにおいても、亜鉛結合型においてのみ熱安定性を増加させ、アポ型のMT分子種においては熱安定性は反対に低下させた。以上より、サルフェン硫黄は亜鉛結合型のMTタンパク質の機能性の向上に関わっていることが示唆された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Free Radical Research
Volume: May 11 Issue: 5 Pages: 1-10
10.1080/10715762.2024.2350524
Allergy
Volume: 78 Issue: 12 Pages: 3258-3260
10.1111/all.15851
International Journal of Molecular Sciences
Volume: 23 Issue: 6 Pages: 3201-3201
10.3390/ijms23063201
Redox Biology
Volume: 57 Pages: 102514-102514
10.1016/j.redox.2022.102514
Chemical Research in Toxicology
Volume: 36 Issue: 1 Pages: 23-31
10.1021/acs.chemrestox.2c00223
https://www.ls.toyaku.ac.jp/~envibio/index.html