マクロファージの細胞内鉄代謝変容がもたらす肝線維化機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated Biometal Science: Research to Explore Dynamics of Metals in Cellular System |
Project/Area Number |
22H04806
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Complex systems
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
菅波 孝祥 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (50343752)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
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Keywords | 鉄 / 非アルコール性脂肪肝炎 / マクロファージ / 慢性炎症 |
Outline of Research at the Start |
近年、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)症例における鉄過剰が報告されているが、その機序や肝臓内における責任細胞は明らかになっていない。研究代表者は、独自の動物モデルを用いて、肝細胞死を起点として肝常在性マクロファージが活性化し、肝線維化が生じることを明らかにしてきた。本研究では、NASHの病態形成においてマクロファージに鉄が過剰に蓄積し、線維化促進形質を獲得する分子メカニズムの解明を目指す。本研究の成果により、アンメット・メディカル・ニーズの高いNASHに対して、鉄代謝異常に着目した発症機序解明と新規治療法開発への展開が期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年注目されている非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では、肝細胞において鉄が関与する細胞死(フェロトーシス)が注目されてきたが、マクロファージの鉄代謝がNASH病態形成に及ぼす影響は明らかでなかった。昨年度までに我々は、磁気細胞分離装置を用いてマクロファージを分類することで、鉄含有量の多いマクロファージサブタイプが線維化促進形質を獲得し、NASHにおける肝線維化に寄与することを報告した。本年度は、RNA-seq解析により、whole liver、あるいは単離マクロファージの遺伝子発現プロフィールを検討した。病態の進展とともに、炎症性サイトカインやケモカインの発現が上昇し、さらに鉄代謝関連遺伝子の発現も大きく変動した。しかしながら近年、マクロファージの多様性が指摘されており、主に表面マーカーや遺伝子発現プロフィールで分類されている。我々は、鉄含有量という新たな観点でマクロファージの多様性を提唱している点がユニークであるが、鉄含有量の多いマクロファージが肝マクロファージ全体の数%以内に止まる理由ことを説明することはできなかった。一方、免疫染色では、鉄蓄積自体を可視化することができないため、鉄過剰蓄積が惹起するリソソームストレスをTFE3染色で代替したところ、死細胞(肝細胞)周囲のマクロファージに特異的にTFE3の核への集積(=活性化)が観察された。同様の結果は、同じTFE転写因子に属するTFEB染色でも確認できた。以上より、死細胞周囲のマクロファージにおいて鉄が過剰蓄積していることが強く示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、whole liverや単離マクロファージの遺伝子発現プロフィールを検討し、病態進展に応じた炎症線維化促進形質の獲得を確認した。これまで、鉄高含有マクロファージを磁気分離装置により単離したため、位置情報が欠落しており、CD11cやリソソームストレスで活性化する転写因子MiT/TFEファミリー(TFE3など)の核移行などでNASH肝における鉄高含有マクロファージの局在を推測してきた。そこで、代謝状況(鉄高含有)、位置情報、遺伝子発現プロフィールを統合的に理解するために、鉄高含有マクロファージのLA-ICP-MS解析や鉄プローブによる染色が必要となる。それぞれ、B01・千葉大学・小椋班、B01・岐阜薬科大学・平山班のサポートを得て、予備的な解析に着手した。LA-ICP-MS解析ではマクロファージ内の鉄含有量を、鉄プローブ解析ではマクロファージ内の2価鉄量を評価するため、この両者の意味するところを認識する必要がある。また、その他の領域内共同研究として、A02・京都薬科大学・石原班と一緒にダウン症モデルにおける脂肪肝表現型の解析にも取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、マクロファージの多様性が注目されている。従来、主にin vitroで炎症促進性M1と炎症抑制性M2に大別されてきたが、実際の病態に合致しないことが明らかになった。また、卵黄嚢由来や骨髄由来などマクロファージの起源や、脳におけるミクログリアや肝臓におけるクッパー細胞など臓器特異的なマクロファージにも注目が集まっている。さらに最近では、シングルセルRNA-seq解析の普及により、遺伝子発現プロフィールによるマクロファージの分類が進み、多種多様なマクロファージサブタイプが報告されている。我々は、crown-like structureにおいて死細胞周囲に集積するマクロファージサブタイプを同定し、慢性炎症や線維化における意義を明らかにしてきた。また本研究では、鉄高含有マクロファージという代謝状態による分類を提唱している。そこで、これらの代謝状態や位置情報に遺伝子発現プロフィールを組み合わせて、NASHの肝線維化を促進する新たなマクロファージサブタイプとして位置づけることを目指す。
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Report
(1 results)
Research Products
(13 results)