Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
鉄同族元素であるルテニウムを添加して長期間培養した大腸菌から、鉄酵素であるカタラーゼ活性が低下した株(LossKat)を単離した。LossKatについて、ゲノム解析を実施したところ、鉄輸送体に関連する複数の遺伝子に点変異が入っていることが認められた。そのため、ルテニウムが鉄代謝経路を阻害し、その環境に大腸菌が進化的に適応した結果としてLossKatが誕生したことが示唆された。しかし、それを裏付ける分子化学的根拠が不十分であった。本研究は、この株の鉄輸送経路に着目して、その機能が維持されているか否かを検証するとともに、この株が誕生する進化的必然性の有無について検証を行う。
ルテニウム(Ru)存在下で培養した大腸菌群から単離されたカタラーゼ機能低下株LossKat(以下LK)の解析を進めた。Ruの濃度を定量することは、技術的に困難であることから、Feの濃度を中心に分析を行ってきた。その結果、RuはFeの恒常性に影響を与える可能性が示唆されてきた。しかし、Ruが直接細胞内のFe濃度に及ぼす影響については十分に評価できていなかった。そこで、Ru存在下で培養した進化前の0day株、比較として最小培地で進化させた大腸菌群から適当に単離したCtrl-1株、LK株の三種類の株を対象に、Fe含有量を評価し比較した。結果として、0dayよりも進化後のLKやCtrl-1でFe含有量が低下していることがわかった。この鉄濃度低下は輸送体の変化によるものではないかと考えて、ゲノムデータを解析したところ、Ctrl-1やLKで共通してfepAと呼ばれるFe-エンテロバクチン(Fe-Ent)輸送体の同一箇所に変異があることがわかった。変異部位はFe-Ent複合体と相互作用する細胞外ループに存在するため、この変異が鉄輸送の効率を低下させている可能性が示唆された。細胞内でFeが少ないことは、呼吸に対する影響が生じると考え、次に、増殖時の酸素消費量を測定した。その結果、Ruの添加は株の種類によらず酸素消費を一部抑制する結果になった。しかし、その条件でもLKは0dayよりも酸素消費量が多くなることがわかった。加えて、0dayとの相対適応度を解析したところ、LKのほうが1.23倍増殖が早いことが示された。したがって、Feが不足している環境でも効率的なエネルギー産生を可能にする進化的な適応が生じていることが示唆された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022
All Presentation (10 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results, Invited: 1 results)