Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究は、対話知能システムと社会規範の関係を明らかにすることにより、人間と機械が共生する社会に求められる新しい社会規範の基盤を提供することを目指す。具体的には、対話が社会規範の基盤であることに注目し、言語哲学において「根源的規約主義(radical conventionalism)」と呼ばれるものに基づき、対話の慣習(convention)の上に成立している対話規範がどのようなものでありうるかを明らかにする。加えて、法哲学における根源的規約主義に基づく従来研究を元に、法的推論に形式的な分析を与え、これとの比較により、根源的規約主義に基づく社会規範のあり方を明らかにすることを目指す。
研究協力者である同志社大学文化情報学部の飯尾尊優准教授の研究室で前年度より開発してきた対話システムを完成させ、ウェブ実験を2回実施した。本実験により、対話への参加を阻害されている状況における疎外感を、特別な発言をすることなしに軽減させる可能性が示された。この結果は、本研究課題で構築してきた対話モデルと整合的であり、当該モデルの有用性と実装可能性をどちらも裏付けるものである。また、当該対話システムの開発のために実施した調査に基づき、対話における上下関係と相槌の関係についてのウェブサーベイ実験も実施した。本実験により、ロボット同士の対話であっても上下関係を想定するのが一般的であることが示された。この結果もまた本研究課題で構築してきた対話モデルと整合的であり、当該モデルの妥当性を裏付けるものである。この二種類の実験の結果は、2024年3月5-6日に静岡大学浜松キャンパスにて開催されたHAIシンポジウム2024で発表した。また、前者の実験については、投稿論文を準備中である。加えて、研究協力者である九州大学の西村友海准教授と共同で、構築したモデルを法的実践との比較を通じて洗練させるとともに、それが持つ社会規範への哲学的含意について検討した。その検討により、対話システムにとっての「対話」は単に言語およびパラ言語のやりとりとみなすべきではなく、本質的に規範を伴うものと考えられることがわかった。このような「根源的規範性」こそが対話システムに求められる「対話」の要件だと考えられる。この点は、書籍のかたちで公表することを予定しており、現在準備中である。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2024 2022
All Presentation (3 results)