Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究では、腸内マイクロバイオームの大規模継代培養実験を行うことで、腸内細菌間における栄養共生関係の解明と、未分離新種のリソース化を目指す。本研究では、ヒト糞便やマウス糞便から採取した腸内マイクロバイオームを、様々な培養条件下において大規模継代培養を嫌気条件下で行う。さらに、継代培養前後におけるマイクロバイオームの構成を明らかにし、継代培養後の集団から腸内細菌種を多数単離する。続いて、単離した腸内細菌の生育における異種の影響を定量化し、腸内細菌間の共生ネットワーク解析を行う。さらに、メタボローム解析を行うことで、栄養共生に関与する代謝物を同定し、腸内細菌における栄養共生関係を明らかにする。
本研究では、新鮮ヒト糞便から採集したヒト腸内マイクロバイオームを、様々な栄養を含む合成培地において大規模継代培養実験(5初期群集×12栄養源×8反復実験=480継代培養系列)を行った。続いて、このような実験によって得られた継代培養後の微生物集団におけるメタ16S解析を実施した。また、継代培養前後の集団に含まれている細菌を単離し、16S rDNAの部分シーケンス解析を行い、単離した菌を簡易同定するとともに、その生育特性を調べた。その結果、糖質を栄養源とした場合、Bifidobacterium sp., Enterococcus sp., または大腸菌の3種のいずれかが独占状態になる場合が大部分を占めた。一方、有機酸やアミノ酸を栄養源とした場合は、大腸菌と硫酸還元菌または硝酸還元菌が共存する傾向が見られた。先行研究により、好気性の環境細菌の場合、炭素源が1種類の糖質しか存在しない場合においても一般的に競争排除則は成立せず、Cross-feedingによって複数種が共存できることが報告されていた。一方、本研究により、嫌気性の腸内細菌では糖を栄養源とした場合に競争排除則が成立しやすいことが示唆された。この原因として、生育環境における酸素の有無が影響していると考えられる。腸内細菌も好気性の環境細菌と同様に、Cross-feedingで利用可能な有機酸を生産する種が数多く存在するものの、無酸素環境で生育するため、有機酸のみを栄養源とした場合に得られるエネルギーは酸化的リン酸化に依存してしまうため、好気呼吸ができない腸内細菌ではそのエネルギー獲得効率は好気性細菌よりも著しく制限されてしまう。そのため、腸内細菌間では、Cross-feedingよりも資源の奪い合いが、好気環境下よりも生じやすくなっていることが示唆された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2024 2023 2022
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 2 results) Presentation (10 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Invited: 3 results)
Antibiotics
Volume: 13 Issue: 1 Pages: 94-94
10.3390/antibiotics13010094
Microorganisms
Volume: 11 Issue: 1 Pages: 92-92
10.3390/microorganisms11010092