Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
自己の身体感覚である内受容感覚は自己意識や社会認知の発達に繋がり、その脳基盤には複数の皮質ネットワークが関わっている。本研究では、内受容感覚の「法則性」にsalience networkが、内受容感覚の「物語性」にdefault-mode networkが関わるという仮説を提案する。この仮説を検証するため、内受容感覚の法則性要素と物語性要素を測定し、それぞれの指標と皮質ネットワーク結合パターンとの関連性を明らかにする。
ヒト認知行動の発達や障害からの回復過程において重要である「当事者化」は、自己と世界の間にある「法則性」と「物語性」を統合することにより実現すると考えられる。本研究では、内受容感覚に「法則性」と「物語性」という二つの要素を仮定し、これらが異なる皮質ネットワークを介して繋がるという仮説を提案した。自己の身体情報に関する感覚である内受容感覚は、前部島皮質や前帯状回を含む脳皮質領域がその神経基盤として報告されており、自己意識や社会行動にも関連すると考えられている。そこで脳内ネットワークのうち、前部島皮質や前帯状回を含むsalience networkは内受容感覚の整合性形成を担い、実行機能課題中に活動が抑制され自伝的記憶と関連することで知られるdefault-mode networkは内受容感覚の自伝的エピソード形成を担うと考えた。内受容感覚の「法則性」と「物語性」はこれら独立のネットワークに支えられお互いの連結性がその統合を促進する。この仮説が支持されるならば、それぞれのネットワーク内・ネットワーク間結合性の強さやパターンの違いが個人の社会行動や自己意識にかかわる思考と関連する可能性がある。本年度は収集したデータの解析を行い、「法則性」と「物語性」の指標は関連することはなく独立であることを明らかにした。「法則性」と「物語性」の高低で分類された4グループ間において共感性(他者視点)尺度が異なることがわかった。これらの行動評価の結果は仮説と矛盾しない。より客観性のある「法則性」指標として心拍誘発電位を測定し心拍フィードバック課題との関連を調査するため脳波測定システムを構築した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。