Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
人間は生活史における経験を内在化し、自己と世界の理解のために「物語」を形成する固有の能力を持つ。本研究は、実世界と実験環境における物語形成の脳基盤の解明を目的とした機能イメージング研究をおこなう。申請者が集積した大学生の日常エピソードに関する現象的特徴と言語記述データを用いて、エピソードの物語性を反映する現象的特徴・言語的記述と脳活動パターンの相関を明らかにする。さらに、実験環境下における統制された経験の物語形成に関与する脳活動に関するfMRI研究をおこなう。日常認知と心理実験の相補的な検討により、「物語性」の脳科学的アプローチの基盤を築く。
すでに取得している大学生のエピソード記憶想起時のfMRIデータ、およびエピソードの現象学的・機能的指標のデータについて、解析を追加した。複数の質問紙から取得した、15項目からなるエピソード記憶の現象学的・機能的指標のスコアのパターンを説明する少数の因子を合成した。その結果、エピソードの人生における重要性を表すと考えられる出来事中心性に関わる項目や、自己に関する洞察や将来の方向づけに関する項目が高い負荷を示す因子が同定され、この因子と、エピソードの物語性の関係が示唆された。さらに、この因子と相関する部位を同定するため、同定された5つの因子について、エピソードごとの因子得点を求め、これらを説明変数とする重回帰分析をおこなった。その結果、前楔部・後部帯状皮質を中心とする後部内側システムにおいて、有意な活動部位を同定した。これにより、物語性の一部を構成する関わるエピソードの心理指標に関わる脳部位を同定できた。これらの成果を原著論文にまとめ、国際学会(Organization of Human Brain Mapping)において、ポスター発表をおこなった。また、エピソードの言語的記述の特徴を反映する脳内表現を検討するため、エピソードの言語データをデジタル化し、形態素解析をおこなった。エピソードを特徴づけるトークンを手動で選択し、そのベクトル表現を説明変数とし、 対応するエピソード想起時のfMRIデータに対して回帰分析をおこなったが、有意な活動は同定されなかった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022
All Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)