Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
多数派・少数派の分断を解消し、人々が少数派の知・方法を理解すること(当事者化)は、少数派の人々が生きやすいインクルーシブ社会の実現のみならず、将来的に、「多数派」社会が抱える様々な困難を解決するために極めて重要である。しかしながら、多くの人間は、「多数派」に属することに安住してしまい、この分断に目を向けられない現状がある。そこで、本研究では、実験心理学、神経科学的な手法を用いて、人々が「多数派」に安住してしまうメカニズムを解明し、「多数派」から脱し、当事者化する方法論を確立させる。
当該年度では、ヒト間で心的ダイナミクスに、影響を及ぼしうると考えたパーソナリティ要因の神経科学的分析を行った。当該分析では、他者の3種類の表情(喜び・怒り・中性)を認知した際の脳活動を機能的近赤外線分光法(fNIRS)により計測した。その結果、中性感情に対し、喜び・怒りの認知時に腹外側前頭前野(VLPFC:ブロードマン44, 45野)、補足運動野・運動前野(PMC: ブロードマン6野)が活動し、それらは、Big 5仮説に基づく、パーソナリティの一成分である神経症傾向と非常に強い相関関係であることがわかった。VLPFCやPMCは、他者の動作や共感に関わるミラーニューロンシステムの一部を構成すると言われており、当該成果はこのミラーニューロンシステムの共感に関わる機能との関連を反映しているものと考えた。2022年度から継続しているヒトの存在と関連する共同サイモン効果(他者のいる方向への反応時間が遅延する現象)については、一般化線形混合モデルを全被験者の反応時間に適用し、当該効果が他者存在、空間的効果(他者のいる方向)、存在・空間効果の交互作用に分解できることがわかった。今後の研究の展望としては、当該課題中の脳機能を測定し、当該効果がどのような脳機序によるものかを明らかにする方向で検討している。仮想現実(VR)を用いた行動計測実験については、遠隔環境下でのVRの同期などの技術的ハードルがあったが、遠隔環境に身体動作などの情報をリアルタイムに転送する新しいシステムの開発に成功し、一部の実験を開始した。今後の研究としては、サンプル数を増やして、コミュニケーション行動のモデル化を目指していく予定である。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2024 2023 2022
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 2 results) Presentation (2 results)
Brain Sciences
Volume: 13 Issue: 8 Pages: 1207-1207
10.3390/brainsci13081207
PeerJ
Volume: 10 Pages: e13944-e13944
10.7717/peerj.13944