Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
通常の地震よりも揺れの周期がゆっくりとしたスロー地震は、その場所を通過する地震波といった、外からの別振動によって誘発される事が知られている。この現象を捉えるために、光ケーブルの伸縮測定という新たな測定技術を利用して、京都府南部において、5m間隔で1万か所という超高密度の揺れの観測を行う。これまで点でしか捉えられなかった地震による地表の揺れを、線状から面状に捉えることができる様になる。どのようにスロー地震が誘発されるかを詳細に調査することを通じ、普通の地震とスロー地震との相互作用や、スロー地震発生のメカニズムに迫る。
近畿地方整備局京都国道事務所の管理する一般国道9号沿いの光ケーブルを、分布型音響センシング(Distributed Acoustic Sensing; DAS)技術により測定する為の準備作業を行い、2022年12月20日から2023年1月17日までの4週間にかけて、連続振動測定を実施した。準備作業には、光ファイバーケーブルの埋設の見取り図の調査や、ケーブルのジオメトリ調査を含んでいる。測定にあたっては、Sintela社製ONYXをDAS測定用の機材として選定し、これを京都駅付近の京都国道事務所内に設置して測定を行った。GPSによる時刻同期を図るために若干の工夫が必要であった。約51kmのケーブルに対して、約6.4m間隔で振動を500Hzサンプリングで測定する設定とした。これにより、約8,000か所での揺れを同時に測定した。同一の光ケーブルに対して二種類の感度の測定を同時に行っており、片方は長距離の測定が可能である一方低周波側のノイズが大きく、もう一方はS/Nが良い物の12kmの測定しかできないものである。機材の再設定時を除き、連続的な観測記録が得られ、データのファイルサイズは合計43TBに及ぶものとなった。記録を見ると、日中は車両の通過に伴うトラフィックノイズが顕著であるほか、橋梁等における振動も明瞭に観測された。但し、地震発生時には、ほぼ全てのチャネルにおいて、地震波の到来が観測されており、地震以外のシグナルとの区別は比較的容易である。特筆すべき記録として、近地では12月29日に大阪府北部で発生したM3.5の地震が観測されたほか、1月10日にインドネシア東部で発生したM7.6の遠地地震波も捉える事に成功した。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
振動測定のための準備と、実際の測定を行うことが初年度の目標であった。実際に測定が実施され、連続データが得られたことから、上記の通り判断した。
得られた記録は容量で43TBもあり、膨大である。特に実際に地震現象が確認された時間帯の記録を中心に、記録の特徴等を調べる。また、別途得られている記録との比較を行うことにより、この地域で発生している内陸スロー地震の検出と調査を進める。