Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究は,紀伊半島の付加体-高圧変成岩類を対象に野外調査を実施することで,数十kmオーダーの大規模な断層すべり構造を認識し,地震発生帯の内部構造を空間的に復元する.また,認識した断層のすべり形態,すべりをもたらす物質,およびその形成深度から,地震発生帯の深度に応じて高速すべりからスローすべりまでどのように変遷するのかを議論する.本研究の野外調査に立脚した研究により,紀伊半島の研究開発プラットフォームを構築し,地震発生帯の更なる研究推進のために貢献したい.
2023年度は,紀伊半島に分布する浅部付加体,深部付加体,および高圧変成岩類を対象に,野外調査,変形構造解析,炭質物ラマン分光分析,および各種組成分析を行うことで,①付加体や高圧変成岩類に認められる断層のすべり形態やすべりをもたらす岩相を認識すること,②被熱温度の情報を入れることで,白亜紀当時の地震発生帯における断層のすべり形態の深度変化を検証すること,③広域地質図を作成することを目標とした.研究の結果,紀伊半島の浅部付加体(被熱温度:200~220度)と深部付加体(被熱温度:270~300度)には,陸源砕屑岩,および陸源砕屑岩,遠洋性-半遠洋性堆積岩,海洋地殻が構造的に混在するメランジュを主とする付加体が存在しており,浅部付加体よりも深部付加体の方が相対的にメランジュの占める割合が多いことがわかった.また,上位の陸源砕屑岩と下位のメランジュを1つのパッケージとし,基底部の断層により繰り返すデュープレックス構造が認識でき,繰り返しの間隔が浅部付加体(数百m)と深部付加体(数十m~数km)では異なることが判明した.さらに断層の上盤側には,浅部付加体では中央海嶺や海山を起源とする海洋地殻が分布するのに対し,深部付加体では粘土鉱物を多く含む半遠洋性堆積岩が分布することがわかった.このことは,地震発生帯200~220度領域から270~300度領域にかけて,断層すべりをもたらす岩相が沈み込む海洋プレート層序の最下部から中間部へ移動すること,断層すべりの結果として生じた構造(すなわち地震発生帯の内部構造)が数百mから数kmへスケールアップすることを示唆している.また,広域地質図を作成したため,紀伊半島における地質図ベースの研究開発プラットフォームを構築できたといえる.今後Slow-to-Fast地震学分野の研究者と議論を行うことで,更なる研究推進へ貢献していく.
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022
All Presentation (5 results) (of which Int'l Joint Research: 4 results)