Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
ゆっくり地震はこれまで、プレート境界におけるせん断破壊として説明されてきた。しかし、かつての沈み込み帯で形成され、現在地表に露出している断層破砕帯の観察によると、100%せん断破壊で記述できるほど単純なプロセスではないことが伺える。新たな知見が蓄積されてきた現在において、「ゆっくり地震=せん断破壊」という認識を再考してみる価値がある。本研究では新たな観測量(地動の歪・回転成分)を加えたメカニズム解推定法を開発し、ゆっくり地震に含まれる非せん断破壊成分を十分な精度で推定することに挑戦する。そして、ゆっくり地震の非せん断破壊成分の実態とそれが意味する背後の物理機構を明らかにする。
本研究では新たな観測量(地動のひずみ・回転成分)を加えたモーメントテンソル解推定法を開発し、ゆっくり地震や通常地震に含まれる非せん断破壊成分を十分な精度で推定することを目指している。令和5年度は、昨年度末に設置した広帯域地震計4台によるアレイ観測データの分析を進めた。この観測は愛媛県新居浜市の北東約1.5km沖にある大島で行っており、豊後水道や日向灘で発生したM4を超える複数の地震を高いSN比で取得することができた。Spudich et al. (1995) に基づき、アレイデータから変位勾配テンソルを最小二乗法で推定し、それからひずみと回転成分を求めた。推定結果の信頼性を確認するために、アレイ中心から2kmほど南西側にある産総研のボアホールひずみ計(設置深度482m)の記録と比較した。観測地点がやや離れていることと観測深度の差異により、完全な一致は得られないものの、双方のひずみ地震動は振幅値も含めて概ね同じ特徴を示すことを確認した。この事実から、回転地震動も適切に推定されたものと見なせる。回転地震動の絶対値はF-netのモーメントテンソル解を仮定して計算した理論波形と概ね一致していることも確認した。フォア―ドモデリングによる波形の比較によると、今回解析した通常地震に関しては、F-net解に含まれるわずかな非せん断破壊成分はartifactである可能性が高いと考えられる。これらの成果は、日本地震学会秋季大会、Slow-to-FastF地震学国際研究集会等で発表した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022
All Presentation (4 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results)