Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
有機合成化学では、より反応性の高い官能基がある場合には、その保護・脱保護といった本来不必要なステップが必要となる。これは、現代有機合成化学における未解決課題である。本研究では、有機化学における最重要官能基であるカルボニル基が有する潜在的な反応性(求電子性)の序列を触媒により逆転させ、より反応性の高いカルボニル化合物を残したまま望みの位置での化学変換の実現を目指す。申請者が独自に開発した錯体がウレアの水素化反応でホルムアミドとアミンを選択的に与えるという発見をもとに、その有機合成化学への応用研究と、その化学選択性の発現機構を明らかにし、触媒の設計原理を明らかにする。
前年度の成果として、独自に開発したホスフィンとピロールの二座配位子を有するイリジウム錯体を触媒として用いると、カルボニル化合物の中で最も反応性が低いとされるウレアの水素化反応に触媒活性を示し、対応するホルムアミドとアミンの1:1混合物を与えることを見出した。この反応の特徴は、より求電子性の高いホルムアミドが水素化されることなく、ウレア優先的に水素化されることにあり、これまでの触媒的なウレアの水素化分解では2分子のアミンとメタノールを与えることと対照的である。この結果を踏まえ、より安価な3d金属とホスフィンとピロールの二座配位子の組み合わせを検討した。種々検討の結果、マンガン(I)錯体が炭酸アミド類の水素化分解に触媒活性を示すことを明らかにした。具体的には、1,3-ジフェニルウレアの水素化分解ではホルムアニリドとアニリンが16%, 62%収率で得られた。また、イリジウム触媒では水素化分解されなかったウレタンの水素化分解に触媒活性を示し、芳香族および脂肪族アミン、アルコールのいずれの組み合わせについても対応するアミンとアルコールを水素化分解生成物として与えた。一方、より求電子性が高いとされるアミドの水素化にはほとんど活性を示さなかったことより、先に報告したイリジウム触媒同様、より求電子性の劣るカルボニル化合物の化学選択的な水素化分解に利用できると期待される。また、本マンガン触媒は二座配位子を有するウレタンの水素化分解触媒の初めての例であり、従来三座配位子のみが用いられてきたウレタンの水素化分解触媒の新たな触媒設計指針を与えるものである。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Communications
Volume: 14 Issue: 1 Pages: 3279-3279
10.1038/s41467-023-38997-2
ChemRxiv
Volume: -
10.26434/chemrxiv-2023-z49zw
Chem. Rec.
Volume: 23 Issue: 9
10.1002/tcr.202300033
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2023-06-13-001
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/nozakilab/publication/publist_iwasaki.html
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/nozakilab/member/biography_iwasaki.html