Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
電子間の強い相互作用に基づく特異な物性を示す強相関遷移金属酸化物は、量子多体系物理探求の舞台や新奇機能デバイス材料として注目されてきた。本研究では、強相関酸化物の多様で新しい研究展開を視野に入れ、どこへでも貼り付けられ、剥がすことのできる、二次元状の強相関酸化物薄膜の創製を目的とする。具体的な方法としては、二次元遷移金属ダイカルコゲナイドを前駆体とした酸化反応によって、強相関性を有する二次元遷移金属酸化物の形成を試みる。そして、二次元強相関酸化物と二次元半導体とのファンデルワールスpn接合を形成し、複数励起子生成に由来する高エネルギー変換効率太陽電池への応用可能性を模索する。
2022年度は物理気相成長(PVD)法によって劇的な絶縁体―金属相転移を示す二酸化バナジウム(VO2)フレークの合成に成功した。また、Si/SiO2基板上にPVD合成したVO2フレークは局所的に歪みが加わっており、バルク単結晶における相転移温度の340 Kよりも高い相転移温度を示すことも明らかにした。それをもとに2023年度は340 K以上において絶縁層と金属相が共存するVO2フレークと二次元半導体の一種である単層MoS2をファンデルワールスヘテロ構造化し、MoS2のフォトルミネッセンス(PL)特性がVO2の相状態によってどのように変調されるかを詳細に調べた。その結果、VO2上に積層したMoS2からのPL光のエネルギーはVO2の相転移前後でほとんど変化せず、VO2/MoS2間の電荷移動やVO2による誘電遮蔽の効果がVO2の相状態に依存しないことが分かった。一方で、PL光の強度は絶縁VO2と金属VO2上で異なり、その強度比はVO2の厚さに依存することが分かった。この結果は、絶縁体―金属相転移に伴いVO2の複素屈折率が変化し、MoS2からの放射光強度、およびMoS2への吸収光の強度がそれぞれ変調したためであると考えられる。実際に、VO2/SiO2/Siヘテロ構造上のMoS2からの発光強度がVO2の相状態、およびVO2の膜厚によってどのように変化するかを数値計算したところ、実験結果とよく一致した。これらの実験結果と数値計算結果は、相転移材料を用いて二次元半導体の発光特性を可逆的かつ空間的に変化できることを示しており、二次元半導体フォトニクスへの応用可能性を期待させるものである。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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