Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究では、メゾ複雑体(細胞内に存在する不定形の高次複合体構造)の性質を解明するための新規超解像顕微鏡の開発を行う。本研究計画で開発する新規超解像顕微鏡は「細胞内・1分子・3次元・高速・高精度・長時間」という特徴を併せ持つ顕微鏡である。通常、顕微鏡において上記の性能はトレードオフの関係にあり並立させることは難しいが、本顕微鏡は「蛍光色素を光らせずに検出する」という新しいコンセプトに基づいた顕微鏡であるため、既存の計測技術に比べて高い次元で上記の性能を実現させることが可能である。この新規超解像顕微鏡を用いてメゾ複雑体を構成する生体分子の分子構造動態を1分子レベルで高精度に計測することを目指す。
細胞内を無秩序に動き回る酵素などの生体高分子は時に集合し秩序を持つことで細胞骨格やオルガネラ、サルコメアなどのマクロな構造体を作り高次機能を果たしている。近年、このような秩序だった構造体だけでなく無秩序な高次構造体(メゾ複雑体)が細胞内に存在しており、生理的に重要な役割を担っていることが注目されている。本研究では、これらのメゾ複雑体の構造動態を計測するために新規超解像顕微鏡の開発を試みた。生体分子の構造動態は極めて速い現象であるため精確に計測するためには高い時間分解能を要するため、初年度に光学系を高速化するための電気光学回折器(EOD)を導入し、それに合わせた高速制御実現のために再構成可能な半導体集積回路(FPGA)を顕微鏡制御コンピューターに実装した。さらに細胞内を拡散する生体分子の構造変化を捉えるために多波長検出系を実装した。これにより1分子内の2点の位置情報を同時に計測することが可能となった。また、ナノメートルオーダーの計測をするためには極めて安定なサンプルステージが必要であるため、超安定ステージを設計し特注で作成した。開発した新規超解像顕微鏡を用いてin votro の計測ではあるがガラス基板上の生体分子1分子の構造変化に伴う蛍光色素の動きを検出することに成功した。本研究で開発した顕微鏡は細胞内メゾ複雑体を含む様々な生体分子の細胞内ダイナミクスの計測の基盤技術として活躍することが期待される。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。