Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究では、メゾ複雑体(細胞内に存在する不定形の高次複合体構造)の性質を解明するための新規超解像顕微鏡の開発を行う。本研究計画で開発する新規超解像顕微鏡は「細胞内・1分子・3次元・高速・高精度・長時間」という特徴を併せ持つ顕微鏡である。通常、顕微鏡において上記の性能はトレードオフの関係にあり並立させることは難しいが、本顕微鏡は「蛍光色素を光らせずに検出する」という新しいコンセプトに基づいた顕微鏡であるため、既存の計測技術に比べて高い次元で上記の性能を実現させることが可能である。この新規超解像顕微鏡を用いてメゾ複雑体を構成する生体分子の分子構造動態を1分子レベルで高精度に計測することを目指す。
本研究の目的はメゾ複雑体内の1分子構造動態計測のための高速3次元超解像顕微鏡開発のであり、昨年度は高速制御システムの構築および超安定ステージの設計・作成を行った。高速制御システムの構築は本研究課題において今後の研究計画をスムーズに進めるために最重要な課題であり安定な動作を実現するまで入念に改良を行っている。まず、光学系を高速化するために電気光学回折器(EOD)を導入し、それに合わせた高速制御実現のために再構成可能な半導体集積回路(FPGA)を顕微鏡制御コンピューターに実装した。EODの導入に当たっては装置の不調があり検証やメーカーでの修理対応などに時間が割かれてしまったが、無事に動作を確認することができた。現在までにこれらの高速制御システムを使用してサンプル中の標的蛍光粒子を自動で検出し、そのまま自動追跡モードに切り替えて経時計測を行う制御ソフトの開発を終えている。また、長時間の高精度な1分子計測を実施するためには顕微鏡メーカーが標準で販売しているステージでは安定性が不十分であるため超安定ステージを導入する必要である。1分子計測の分野において多くの研究室で長年使われてきている十分な性能が保証された超安定ステージが存在しているが、販売していたメーカーが生産を中止してしまったため、別の金属加工業者に依頼して特注仕様で超安定ステージの作成を行った。現在、完成したステージの性能評価に取り組んでいる。
3: Progress in research has been slightly delayed.
本研究で使用予定であった装置(EOD)に不調があり原因究明やその修理対応に時間を要した。現在は修理が完了し無事に運用を開始できており大きな遅れにはなっていない。
装置の不調による遅れが生じて研究計画はやや後ろ倒しになってしまっているが、研究計画自体を変更しなければならないような状態にはなっていない。本年度は引き続き研究計画に従って3次元計測系への拡張および2色同時検出システムの実装を行う。