Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
細胞運動は、免疫応答や神経血管形成など生体内で重要な役割を果たすとともに、がんの浸潤や転移にも関連している。DOCK (Dedicator of cytokinesis)は、アクチン細胞骨格制御シグナル伝達に重要なGタンパク質Rac、Cdc42を活性化し、細胞の形態変化やがん細胞の運動を促進するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)である。本研究では、DOCKとGタンパク質が機能する細胞膜近傍でのこれらのタンパク質複合体(メゾ複雑体)の動的構造を、クライオ電子顕微鏡構造に基づくクロススケール計測により解析する。
本研究は、神経形成や免疫応答において細胞骨格を制御するDOCKファミリーグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の分子動態を、クライオ電子顕微鏡や高速原子間力顕微鏡(AFM)などのクロススケール計測によって明らかにすることを目的としている。本年度は、DOCK5と結合分子ELMO1、およびその上流と下流のGタンパク質RhoGとRac1との複合体についてクライオ電顕データを追加取得し、より高分解能で立体構造を決定し、詳細な分子間相互作用を明らかにした。RhoGに結合した状態と結合していない状態のDOCK5/ELMO1の構造比較から、RhoGはDOCK5/ELMO1の閉じた状態から開いた状態への構造変化を促進することが示唆された。実際、表面プラズモン共鳴(SPR)相互作用解析から、RhoGがDOCK5/ELMO1のRac1に対する結合親和性を高めていることが明らかになった。決定したRhoG/DOCK5/ELMO1/Rac1複合体の立体構造からは、既知の結晶構造から予想されるELMO1とRhoGの間の主要な相互作用に加え、DOCK5とRhoGの間の新たな相互作用が明らかになった。さらに、RhoGの部位特異的変異導入と機能解析から、RhoGとDOCK5の相互作用がin vitroでのRhoGによるDOCK5/ELMO1の活性化に寄与していることが確認された。RhoG/DOCK5/ELMO1/Rac1複合体のクライオ電顕マップを詳細に解析した結果、DOCK5複合体構造の柔軟性が明らかになった。この結果から、DOCK5のGEFドメインが細胞膜上で基質Gタンパク質に接近できる可能性が示唆された。そこで、大阪大学 笠原健人博士との共同研究で、脂質二重膜上に担持されたDOCK5複合体の分子動力学シミュレーションを行なった。また、金沢大学 Richard Wong博士との共同研究で、高速AFMを用いてDOCK5複合体の構造ダイナミクスを観察した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochem Biophys Res Commun.
Volume: 653 Pages: 12-20
10.1016/j.bbrc.2023.02.054
https://structure.m.u-tokyo.ac.jp/xscalebio/offered/a02-8.html