Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
ユビキチン・プロテアソーム系は異常タンパク質や役目を終えたタンパク質を選択的に分解することによりタンパク質恒常性の維持に必須の役割を果たしている。最近、我々は、プロテアソームが様々なストレスに応答してユビキチン化基質と液-液相分離(LLPS)し、核や細胞質にメゾスケールの液滴を形成することを見出した。ユビキチンとデコーダー分子によるLLPSが相次いで発見されているが、その制御機構については不明な点が多い。そこで本研究では、ユビキチン液滴の再構築系を開発するとともに、さらに、メゾ複雑体としてのユビキチン液滴を介したプロテアソームとオートファジーの連携機構を解明する。
ユビキチン・プロテアソーム系は異常タンパク質や役目を終えたタンパク質を選択的に分解することにより、タンパク質恒常性の維持に必須の役割を果たしている。最近、プロテアソームが様々なストレスに応答してユビキチン化基質と液-液相分離(LLPS)し、核や細胞質にメゾスケールの液滴を形成することを見出した(Nature 2020;未発表)。これらプロテアソーム液滴の形成は、特定のユビキチン鎖と専用のユビキチンデコーダーRAD23Bの多価相互作用が駆動力となる。一方、ユビキチン選択的オートファジーやストレス顆粒においてもp62やUBQLN2などのユビキチンデコーダーがキー分子となり、ユビキチンを含有する液滴様構造体を形成することがわかってきた。これらユビキチン液滴の制御分子はいずれも神経変性疾患の関連因子であるため、ユビキチン陽性凝集体の形成にも関与する可能性が示唆されている。しかしながら、液滴形成を誘導するユビキチンコード、そしてそれらの凝集体形成(液-固相転移)への関与は依然として不明である。そこで本年度は、ユビキチン液滴の再構築系を開発した。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
以下のように試験管内LLPSアッセイのためのリコンビナントタンパク質の調整に成功したため。蛍光標識ユビキチン化タンパク質の調製: モデル基質としてGFPとユビキチン鎖伸長用のユビキチンを付加したUb(Ub-GFP)をユビキチンし、試験管内アッセイのモデル基質を調整した。また、様々な鎖特異的なユビキチン化酵素を用いることで、K48鎖やK63鎖、M1鎖の調製に成功した。蛍光標識ユビキチン相分離ドライバーの調製: RAD23B、UBQLN2、p62はいずれもUBLやUBA、PB1ドメインなどが柔軟なリンカーで繋がったマルチドメインタンパク質であり、KやC残基を豊富にもつため、蛍光標識はSortaseを用いたペプチドライゲーション法を用いた。上記により調製した各種polyUb-GFPとユビキチン相分離ドライバーを様々な組み合わせと濃度で混合し、解析した。この結果、明確なユビキチン鎖の選択性は観察されなかったが、それぞれの相分離ドライバーがユビキチン液滴を介して混ざることが明らかとなった。
高浸透圧ストレス応答性のユビキチン液滴は主に核内で形成し、プロテアソームが集積することで分解され消失する(Nature 2020)。しかし、プロテアソームを阻害すると、細胞質においてもユビキチン液滴が観察され、プロテアソームだけではなくp62を含有することを見出している。プロテアソーム阻害によりp62やオートファジー関連因子の遺伝子発現が誘導されることが報告されており(Sha et al, JCB 2018)、ユビキチン液滴を介したプロテアソームとオートファジーのクロストークが示唆される。また、我々はプロテアソームの阻害時にK48/K63分岐型ユビキチン鎖が増加することを見出しているが(PNAS 2018)、K48鎖にK63鎖が付加(分岐)することでRAD23B液滴にp62がリクルートされ、“K48/K63分岐鎖―RAD23B-p62”のハイブリッド液滴が形成することが想定される。そこで、本ハイブリッド液滴の形成過程と流動性の変化を生細胞4DイメージングやFRAPにより解析する。また、RAD23Bやp62と相互作用するユビキチン化基質やユビキチン鎖の変動を、低濃度ホルマリン固定によるX-link/IP/MS法や近接ビオチン標識法(TurboID/MS法)、ユビキチン鎖絶対定量法(Ub-AQUA/PRM法)によりモニターする。