超硫黄分子に着目したアミノアシルtRNA合成酵素の新規機能の探索
Publicly Offered Research
Project Area | Life Science Innovation Driven by Supersulfide Biology |
Project/Area Number |
22H05559
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (III)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若杉 桂輔 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20322167)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥7,020,000 (Direct Cost: ¥5,400,000、Indirect Cost: ¥1,620,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
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Keywords | 超硫黄分子 / アミノアシルtRNA合成酵素 / 蛋白質間相互作用 / 機能制御 / アミノアシル化 / 蛋白質 / 機能 / 制御機構 / アミノアシル化反応 / 多機能性蛋白質 / グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゼナーゼ / タンパク質間相互作用 |
Outline of Research at the Start |
アミノアシルtRNA合成酵素はアミノ酸をtRNAに結合させるアミノアシル化反応を触媒する。本研究では、超硫黄分子に着目しアミノアシルtRNA合成酵素の新規機能を探索することを目指す。具体的には、システイニルtRNA合成酵素による蛋白質のシステイニル化修飾、また、超硫黄化システインのシステイニル化修飾について解明することを目指す。さらに、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GapDH)のシステイン残基の超硫黄化により制御を受けるアミノアシルtRNA合成酵素の機能解析を目指す。特に、トリプトファニルtRNA合成酵素とGapDHとの相互作用などを解析し機能制御機構の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
アミノアシルtRNA合成酵素は、蛋白質翻訳系でのコドンテーブルを成立させるうえで要となる酵素である。最近、アミノアシルtRNA合成酵素は、tRNAのアミノアシル化反応だけでなく、蛋白質に対するアミノアシル化修飾反応も触媒することが報告された。この反応では、アミノアシルtRNA合成酵素により産生されるアミノアシルAMPがターゲット蛋白質のLys残基に反応し、Lys残基がアミノアシル化修飾を受ける。本研究では、このアミノアシル化修飾機能に関わるアミノアシルtRNA合成酵素の新規生理機能の解明を目指している。癌細胞では、細胞外から細胞内へのトリプトファン(Trp)に対する高感度な取り込みが起こり、癌周辺のTrpを枯渇させることでT細胞の活性を抑制し、免疫寛容が生じる。我々は、インターフェロン(IFN)-γにより発現量が著しく増加するトリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)が高感度Trp輸送に関与していることを明らかにした。本研究では、TrpRSによるTrp-AMP合成能と細胞内のTrp飢餓状態が高感度 Trp 輸送に極めて重要であることが明らかになった。特に、Trp-AMP合成を阻害するとTrp飢餓細胞へのTrp輸送が抑制されることが明らかになった。さらに、脱アセチル化酵素を使用した実験により、高感度Trp輸送にTrpRSによる蛋白質のトリプトファニル化修飾が関わっていることが明らかになった。今後は、TrpRSの超硫黄産生の機能との関連を明らかにすることにも挑む。ヒトTrpRSに結合するピリドキサールリン酸(PLP)を介した超硫黄分子産生メカニズムがtRNAに対するアミノアシル化や蛋白質に対するアミノアシル化のメカニズムとどのように関連しているのか解明することを目指す。また、高感度Trp輸送と酸化ストレスや超硫黄化との関連を明らかにすることに挑む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高感度Trp輸送は、IFN-γに刺激された細胞やTrpの代謝酵素であるインドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)を発現する細胞が行うTrp特異的な高親和性の取り込みである。我々は、TrpRSが高感度Trp輸送機構に関与していることを明らかにした。本研究により、TrpRS による Trp-AMP 合成能と細胞内のTrp飢餓状態が高感度 Trp 輸送に極めて重要であることが明らかになった。これまでの結果をもとに、IFN-γ処理によって誘導される高感度Trp輸送機構として以下のスキームを考えている。(1)まず、細胞をIFN-γで刺激すると、IDO1とTrpRSの発現量が著しく増加する。(2)IDO1の発現量の増加は、Trpの代謝を促進し、Trpの欠乏状態に導く。(3)細胞内のTrpの欠乏状態は、TrpRSと相互作用する蛋白質分子の発現量を増加させ、また、TrpRSの細胞外への分泌を誘導する可能性がある。(4)その後、細胞外に分泌されたTrpRSは細胞外のTrpと結合し、TrpRS相互作用蛋白質を介して、高感度Trp取り込みが誘導されると考えられる。この際、細胞外 TrpRS は Trp-AMPを合成し、細胞表面蛋白質をトリプトファニル化する可能性があり、Trp はエンドサイトーシスによってトリプトファニル化蛋白質として細胞内に輸送される可能性がある。今回、脱アセチル化酵素を使用した実験により、TrpRSによる蛋白質のトリプトファニル化修飾が高親和性Trp取り込みに関わっていることが明らかになった。さらに、今回、Trp飢餓条件下おいて、TrpRSを介する高感度Trp輸送を抑える阻害剤を2種類見出した。今後、これらの阻害剤を活用することにより、高感度Trp輸送にTrpRSによる蛋白質のトリプトファニル化修飾が関わっていることを実証することを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
システイニルtRNA合成酵素(CysRS)が超硫黄分子を産生し、システインパースルフィドなどを含む蛋白質合成に関わっていることが報告された。CysRSのアミノ酸配列には、パースルフィド産生に重要なPLPへの結合に重要な保存されたLys残基が存在する。また、アミノアシルtRNA合成酵素の多くに超硫黄産生能があることが明らかになった。本研究では、ヒトTrpRSを主な研究ターゲットに選び、アミノアシルtRNA合成酵素のPLPを介した超硫黄分子産生メカニズムがtRNAに対するアミノアシル化や蛋白質に対するアミノアシル化のメカニズムとどのように関連しているのか解明することを目指している。今後は、高親和性Trp輸送と酸化ストレスや超硫黄化との関連を明らかにすることにも挑む。IFN-γ添加により発現量が増加する一酸化窒素合成酵素の影響なども解析する。また今後は、まず、Trp欠乏状態で、ヒトTrpRSと結合する細胞表面の分子を特定することに挑む。次に、相互作用分子のsiRNAを用いて相互作用分子を特異的に欠失させ、TrpRSを介した高感度Trp輸送における相互作用分子の重要性を明らかにすることを目指す。また、ヒトTrpRSはIFN-γ刺激により発現量が著しく増加するが、IFN-γ刺激時、細胞内には活性酸素種が多く産生される酸化ストレス状態になっており、ヒトTrpRSは翻訳後修飾を受ける可能性がある。そこで、ヒトTrpRSを精製し質量分析による解析により、TrpRSの修飾の解明を目指す。さらに、TrpRSの翻訳後修飾と、高感度Trp輸送に関わるTrpRSの機能制御機構との関連を解明することも目指したい。また、TrpRSの細胞外や細胞膜への移行メカニズムの解明にも挑みたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)