Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
細胞内の化学反応は、特定の場所に特定のタンパク質を集めた細胞内区画をつくることにより制御されている。近年、この細胞の区画化の仕組みに、特定の立体構造を有さない非ドメイン型タンパク質とRNAが、水と油のように分離する仕組みが働くことが明らかになってきた。本研究課題では、テトラヒメナが持つDNA削減という特殊な現象が、特定の時期に特定のゲノム領域だけで起こる仕組みを明らかにし、非ドメイン型タンパク質が制御する細胞内非膜区画形成機構の理解を目指す。
細胞の生命活動を担う様々な化学反応は、特定の場所に特定のタンパク質を集めた細胞内区画をつくることにより制御されている。近年、特定の高次構造を有さない非ドメイン型タンパク質やRNAが液-液相分離して非膜性の細胞内区画を形成する機構が注目されている。非ドメイン型タンパク質が制御する非膜区画の形成機構の解明を目指して、本年度は、テトラヒメナのDNA削減を担う核内区画を構成するタンパク質を探索した。DNA削減を担う核内非膜区画の主要構成因子と相互作用するタンパク質のうち、核内非膜区画が形成される時期に特に多く蓄積する30個の候補タンパク質について、GFPが融合したタンパク質を発現するトランスジェニック株を樹立した。これらのトランスジェニック細胞株において、GFP融合タンパク質の局在を解析したところ、解析した半数の細胞株で、DNA削減を担う核内区画に特異的なGFP融合タンパク質の局在が観察された。これらの新たに見出したタンパク質に対して、対応する遺伝子破壊株の作成を進めるとともに、本年度は、DNA削減を担う核内区画に含まれるRNAの同定を目指した。本核内区画の探索には、近接依存性標識法、空間トランスクリプトーム法、難溶性RNA抽出の手法を検討した。また、解析に用いるテトラヒメナゲノムの情報基盤を最新のものに更新した。検討した3つの手法の中で、難溶性のRNAの抽出法を用いた試料が最も有望であることが見込まれたので、はじめに、難溶性RNAのトランスクリプトーム解析を実施した。この解析の過程では、リボソームRNAを除去する方法を検討し、実際にトランスクリプトーム解析した試料中のリボソームRNAが減少する一定の効果を確認した。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
当初の計画通り、DNA削減を担う核内区画を構成するタンパク質の探索を行い、本核内区画に特異的に局在する15個のタンパク質を新たに見出すとともに、同区画を構成するRNAの探索に向けて、ゲノム情報の整備やリボソームRNAの選択的除去に有効な方法を見出すことに成功しているため、概ね順調に進展していると判断した。
DNA削減を担う核内区画を構成するタンパク質成分について、リコンビナントタンパク質を準備し、試験管内での再構成系による相分離制御機構の解析を進めるとともに、同区画を構成するRNAの探索に関しては、精製条件等の検討を行い解析試料の最適化を目指す。
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