上皮細胞の恒常性維持における力覚応答に関与するRhoGEF, Soloの機能解析
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding multicellular autonomy by competitive cell-cell communications |
Project/Area Number |
22H05618
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (III)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大橋 一正 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (10312539)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥10,920,000 (Direct Cost: ¥8,400,000、Indirect Cost: ¥2,520,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
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Keywords | 力覚応答 / アクチン骨格 / RhoGEF / 中間径フィラメント / 細胞競合 / 上皮細胞 |
Outline of Research at the Start |
上皮細胞集団の個々の細胞は、細胞同士がお互いの発する力や硬さに応答する力覚応答によって細胞骨格の再構築や構造的強度を制御し、恒常性の維持、形態形成や機能発現を行っている。本研究は、脊椎動物の上皮細胞層に出現した変異細胞が頂端側へ排出される現象をモデルに、力覚応答に関与するRhoGEFのSoloによる細胞間接着部位の力学的制御、細胞骨格の再構築の分子機構を解明することを目的とする。特に、変異した細胞による細胞間接着部位における力学的変化に周囲の正常細胞内のSoloが応答し、アクチン骨格と中間径フィラメントであるケラチン繊維の再構築、デスモソーム構造の制御を行う分子基盤を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、イヌ腎上皮MDCK細胞の細胞層に出現させた変異細胞をが細胞競合によって頂端側に押し出される過程(Apical extrusion)において、正常細胞における中間径フィラメントのKeratin 8/18線維の構造やデスモソーム構成因子に対するSoloの働きを解析した。Soloの発現抑制はApical extrusionを顕著に抑制することから、細胞間接着構造がまだ変化していないApical extrusionの初期段階でSoloの発現抑制によるKeratin 8/18繊維の構造やデスモソーム構成因子の局在への影響を解析した。その結果、正常細胞でのSoloの発現抑制は、変異細胞と接した細胞間接着部位へのKeratin 8/18繊維の集積を有意に抑制した。さらに、デスモソームの細胞間接着分子であるDesmoglain2についても変異細胞と接した細胞間接着部位での増強が抑制された。また、正常細胞でのKeratin 8の発現抑制によるKeratin 8/18繊維ネットワークの撹乱やDesmoglain2の発現抑制はApical extrusionを顕著に抑制した。一方、活性型Rasを発現させて生じさせた変異細胞は、Soloを発現抑制した正常細胞の基底側に大きく仮足を浸潤させる現象が観察された。これらの結果から、Soloは、正常細胞において、デスモソーム構造とともにケラチン繊維ネットワークを変異細胞の周囲の基底部付近で増強させ、変異細胞の基底側への進入を防ぐ機能があることが推測された。また、Soloのプロテオミクス解析をヒト大腸癌由来のDLD1細胞を用いて行い、細胞接着や細胞骨格に関与する多数の候補蛋白質を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MDCK細胞の細胞層に出現した変異細胞の細胞競合におけるApical extrusionについて、変異細胞を取り囲む正常細胞でのSoloによるKeratin 8/18繊維の再構築の重要性を確認することができた。また、Apical extrusion時の正常細胞側の細胞間接着部位においてKeratin8/18繊維をアンカーするデスモソームの構成因子の局在変化にもSoloが必要であることを明らかにした。さらに、正常細胞におけるSoloの発現抑制は、変異細胞の正常細胞の基底部への仮足の伸展を促進することを見出した。この結果から、Soloは、変異細胞を組織内へ浸潤させないようにする中間径フィラメントの構造の形成に寄与することが示唆された。また、Soloに対するプロテオーム解析を行ってSoloと機能的な相互作用をもつ蛋白質の候補を多数同定することができた。現在までに、いくつかの因子についてはSoloとの共局在や発現抑制によるSoloの局在への影響を検討し、Soloとの相関関係の解明を進めている。また、張力感知蛍光プローブの開発については、張力センサーとして用いる張力負荷で蛍光を失う蛍光蛋白質YFPの変異体のスクリーニングを開始した。張力が負荷されることが予想されるN末端とC末端のβシート構造の一部をランダムな配列にしたYFPの変異体ライブラリーを作製し、一次スクリーニングとして、蛍光を持つが構造の不安定なもの温度感受性を指標に探索した。これまでにYFPよりも10度以上低い65度で蛍光を失う変異体を得ることはできたが、動物細胞における張力感知蛍光プローブとして機能しなかった。より低い温度で蛍光を失う変異体を見出す必要があると考え一次スクリーニングを継続して行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.張力負荷依存的な蛋白質間相互作用の探索:張力負荷に依存してSoloが細胞間接着部位へ集積することから、細胞間接着部位において、機械的な力の変化に依存した蛋白質相互作用をBioIDによるプロテオーム解析で探索する。Soloは張力負荷とその局在変化のタイミングがずれていることから、Soloが機械的な力によって相互作用蛋白質を変化させている可能性は低くなったため、ケラチン8/18繊維を対象とする。ケラチン8のTurboIDプローブを作製し、上皮細胞に発現させてビオチン化を行う。この時、細胞内のアクトミオシンの収縮力を薬剤によって消失させた条件でビオチン化の程度が変化する蛋白質を探索する。 2. 上皮細胞層の力学的環境の恒常性維持におけるSoloの機能解析:プロテオーム解析によって得られたSoloの相互作用蛋白質の候補について、細胞間接着に関与するものを選択しSoloとの結合とSoloの局在への影響を解析する。機能的な相互作用が見出された蛋白質について、細胞競合モデルにおいて正常細胞、変異細胞の双方で発現抑制し、Apical extrusionへの関与を検討する。また、それらの過剰発現や発現抑制によって上皮細胞集団の力学的恒常性の維持に対する機能を解析する。 3. 細胞間張力を可視化する張力感知蛍光プローブの開発:張力の負荷で蛍光特性が変化する蛍光蛋白質(GFP)を得るために、GFPのN末端とC末端のβシート構造にランダムなアミノ酸置換変異を導入したライブライーについて、温度感受性変異体のスクリーニングを引き続き行い、65度以下で蛍光を失う変異体を探索する。得られた変異体をカドヘリンの細胞内ドメインに挿入してプローブとしての機能を検証する。
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Report
(1 results)
Research Products
(9 results)