Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
群れ形成は動物に広く見られる重要な生存戦略であり、群れ形質の多様化は動物種ごとの生活史や環境適応の実現に大きな役割を果たす。群れ形質が種間で多様化する過程には、個体の行動特性の進化とそれを支える神経基盤があると考えられ、その解明は生物ナビゲーションの中核的課題である。しかし、『個体の行動特性のどのような種間の違い』が『神経回路のどういった働き』により生じ、群れ形質の多様性が現れるのかはわかっていない。本研究では、キイロショウジョウバエをはじめとするショウジョウバエ科昆虫の群れ形質を情報学分野の研究者と解析することで、群れ形質の多様化を生み出す個体の振る舞いや神経基盤を明らかにすることを目指す。
本研究では、キイロショウジョウバエをはじめとするショウジョウバエ科昆虫を研究材料とすることで群れ形質の種間差を生み出す分子・神経機構を理解することを目指す。今年度、キイロショウジョウバエと同属のショウジョウバエ種が示す群れ行動に着目した。ショウジョウバエ属の種は実験室下で継代飼育が可能であり、分子遺伝学的な手法を適用することで群れ行動を制御する遺伝子・神経回路の理解を進めることができると考えたためである。ショウジョウバエ属の11種を対象に行動を定量的に解析した結果、キイロショウジョウバエと比較的近縁な種間においても、群れを積極的に作る種と群れをあまり作らない種がいることが明らかとなった。さらに、解析したショウジョウバエ属種の一部では、群れ行動に関与することが期待される神経回路を標識する系統の作出に成功した。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
キイロショウジョウバエと同属のショウジョウバエ種において、集団行動を定量し、その多様性を明らかにできた。また、一部の種では遺伝子組換え技術を用いて、群れ行動を制御することが期待される神経回路を標識する系統の作出に成功したため。
今後は、遺伝子組換え技術を解析対象のショウジョウバエ種に適用することで、群れ性質を制御する遺伝子・神経回路を探索する。同時に情報学分野の領域メンバーと共同で群れの性質の種間差を生みだす個体の行動ルールを明らかにする。以上により、ショウジョウバエ種間における群れ行動の多様化を生み出すメカニズムの理解を目指す。
All 2023 2022
All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results, Open Access: 2 results) Presentation (2 results)
iScience
Volume: 26 Issue: 5 Pages: 106617-106617
10.1016/j.isci.2023.106617
Royal Society Open Science
Volume: 9 Issue: 8 Pages: 220042-220042
10.1098/rsos.220042
Journal of Insect Behavior
Volume: 35 Issue: 1-3 Pages: 44-55
10.1007/s10905-022-09798-0