Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
微細藻類の遊泳において重力は非常に重要な要素である。自然界では赤潮藻類の日周鉛直移動が有名であり、実験室レベルでは、個体が重力に逆らって泳ぐ負の重力走性、重力走性に駆動された集団運動である生物対流が知られているが、鉛直方向の運動を可視化する研究は少なく、重力走性と日周鉛直移動との関係もわかっていない。本研究はジオラマ環境として鉛直環境を実験室内で再現し、鉛直環境での微細藻類の行動を徹底的に可視化・解析する。得られた軌跡を機械学習の手法で分類し、微細藻類はどのように重力に応答して運動するのか、特に赤潮藻類はどのように日周鉛直移動を行うのかを定量的かつ階層縦断的に明らかにする。
微細藻類の遊泳における重力の役割を検証するため、モデル微細藻である単細胞緑藻クラミドモナスと日周鉛直移動を示すラフィド藻シャットネラの重力方向の遊泳を広視野水平顕微鏡を用いて解析した。クラミドモナスについては、負の重力走性の力学メカニズムのうち形態非対称性のメカニズムが主にはたらいて上向きトルクが発生していることを示し、さらに生理的メカニズムも関与していることを示唆していた(Kage et al., 2020, JEB)。本年度、生理的メカニズムの関与について、除膜再活性化モデルを用いて検証した。除膜再活性化モデルは界面活性剤を添加して除膜した(死んだ)細胞にATPを添加すると再び動き出すという系であり、生理的な重力感知の影響が排除できると考えられる。除膜再活性化モデルも負の重力走性を示したが、その程度は生細胞より弱かった。この結果は以前の研究 (Kage et al. 2020, JEB) で得られた結論を支持している。現在、除膜モデルおよび生細胞の重力方向の遊泳に与えるカルシウムイオンの影響について検証を行っている。シャットネラについては、前年度に構築した広視野水平顕微鏡システムを赤外光照明で記録できるように改良し、シャットネラが反応しうる可視光のない状態で朝晩の重力方向の運動を解析した。朝に負の重力走性を示し(上方向に偏って移動し)、夜間に落下していることを示唆するデータが得られているが、鞭毛運動も含めてさらに多面的な検証が必要と考えている。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022
All Presentation (7 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Invited: 3 results) Funded Workshop (1 results)