Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
多くの生物にとって有性生殖は、過酷な環境を凌ぐためのシステムとして機能しており、配偶子同士がいかに効率よく出会い、接合を達成するかは、種の存続に関わる死活問題である。本研究では、緑藻ボルボックス系列が編み出した、オス側の配偶子(すなわち精子)の集団-独立体制転換に基づく受精様式を、確実に受精を達成するための卓越した原生知能システムと捉え、同系列の精子が集団型から独立型へと、根本的に異なる体制へと転換するにもかかわらず、それぞれ適切に遊泳し、効率よく受精を達成するための基盤を明らかにする。
本研究は、緑藻ボルボックス系列の受精で見られる、オス側の配偶子が集団(精子束)から独立した細胞(精子)へ体制転換するシステムを、確実に受精を達成するための卓越した原生知能システムと捉え、この現象の実態とその基盤となる細胞構造・分子機構を解明することを目的としている。本研究では2022年度までに、 ユードリナ精子の集団-独立体制転換を人為的に誘導する系を確立し、集団型精子の鞭毛は非対称型の運動波形を示すのに対し、独立型精子の鞭毛は対称型の運動波形を示すことを明らかにした。2023年度は繊毛・鞭毛運動解析用ソフトウエアBohbohを導入し、主に独立型精子の遊泳の速度・軌跡の変化を解析した。その結果、解離直後は37 μm/sec程度で回転運動するのに対し、解離後約1時間経過すると60 μm/sec程度で前進遊泳することを示した。また2022年度までの鞭毛運動解析で、独立型精子の鞭毛打の方向が、時間経過に伴って前方から後方へと変化する様子が観察されていた。そこで2023年度に、集団型および独立型精子の鞭毛基部体を、抗クラミドモナスSAS-6抗体を用いた間接蛍光抗体法により可視化した。その結果、各精子の2個の鞭毛基部体は、集団型精子および解離直後の独立型精子では、細胞体の長軸に対して平行に近い配置をとる2つのシグナルとして検出されたのに対し、解離後1-2時間経過した独立型精子では1点のシグナルとして検出された。このことから精子の2つの鞭毛基部体は、集団-独立体制転換を経て、平行に近い配置で並列する状態から底部が近接する状態へと変化することが示唆された。今後、透過型電子顕微鏡法により鞭毛基部体を直接観察し、その配向変化をより明確にすることで、独立型精子の前進遊泳を可能にする細胞基盤が明らかになると期待できる。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2024 2023 2022
All Presentation (4 results) (of which Invited: 1 results)