Exploration of a diorama environmental learning format using a transportation network of slime mold
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced mechanics of cell behavior shapes formal algorithm of protozoan smartness awoken in giorama conditions. |
Project/Area Number |
22H05693
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (IV)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高松 敦子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20322670)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
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Keywords | 真正粘菌 / 輸送管ネットワーク / 学習 / 原始的な知 / ジオラマ行動力 / 真正粘菌変形体 / ネットワーク / 記憶 / ジオラマ行動力学 |
Outline of Research at the Start |
粘菌はアメーバ状の大きな単細胞生物である。構成が単純であるにも関わらず、迷路を解くなど原始的ではあるが「知」といって良い現象が次々発見されている。その細胞の大きさから、脳や神経系の代わりに細胞の隅々に原形質を運搬する輸送管ネットワークを発達させた。本研究では、粘菌のような単純な構成要素から成るシステムから、学習などの高度な機能がどのように実現できるのか、その本質を抽出することを目指す。輸送管ネットワーク構造に着目し、忌避橋通過実験、空間周期的刺激実験などのジオラマ環境下の行動観察実験を通して、学習過程で獲得する輸送管ネッ トワーク構造の変化を観察・定量解析しその機構を探る。
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Outline of Annual Research Achievements |
粘菌はアメーバ状の大きな細胞で、その形を変化させながら環境中を這い回る。細胞内には輸送管ネットワーク構造が発達しており、細胞の中身である原形質(核、栄養分、酸素を含む)を細胞全体に輸送する役割を持つ。これまで私たちは粘菌の輸送管ネットワーク形態が環境に依存して動的に変化し、その結果、エネルギー消費も効率化されるなど、生物としての機能が最適化されることを明らかにしてきた。一方で、迷路を解くことができたり、環境変化や状態を学習できるなど、粘菌が持つ「知」の機能が近年次々見い出されてきた。 粘菌の学習メカニズムについてこれまで、多重振動子仮説、細胞内分子仮説などいくつかの仮説が提案されてきた。しかし、記憶を保持する実態について決め手となる証拠は今のところない。 本研究では、粘菌のような単純な構成要素から成るシステムから、記憶や学習などの高度な機能がどのように実現できるのか、その本質を抽出することを目指す。本研究では、粘菌の学習のメカニズムの本質は輸送管ネットワーク構造にあると予想した。粘菌をジオラマ環境下に配置した粘菌の学習過程で獲得される輸送管ネットワーク構造の変化を定量解析して、その構造を探る。 22年度はフランスの研究グループが提案した「危険橋通過の学習実験」について、追試を行い学習の過程に形成される輸送管ネットワーク形態の解析を行った。輸送管を破壊すると記憶が弱まることから、輸送管形態が粘菌の記憶に深く関わることを明らかにした。別の視点から粘菌の記憶メカニズムを探るために、新たに周期的空間刺激を与えるジオラマ環境を用意した。その結果、粘菌は周期的空間刺激を記憶することが示唆された。次年度は本セットアップにおける輸送管ネットワーク解析を行う。危険橋通過学習過程における輸送管ネットワーク変化との比較を行い、それらの共通点から記憶の実態について調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粘菌の輸送管ネットワークによる学習のメカニズムについて明らかにするために、全体の研究計画を以下の3段階に設定した。このうち、22年度は(1)については完了し、(2), (3)に着手した。 (1) 「忌避橋通過の学習実験」の追試と輸送管ネットワーク解析:Boisseauらは、粘菌にとって忌避物質であるキニーネを含む培地ブロック(危険橋)を、餌培地で作成したスタートブロックとゴールブロックで挟んだセットアップを考案した。危険橋を渡る行動を数日間経験させると、橋上を広がりながらより速く渡る、言わば危険に対する馴化がおきた状態になる。この馴化記憶の実態を探るために、ゴールに形成された粘菌のネットワーク形態を調べた。その結果、ネットワークは日数経過とともに樹状から網目状に変化すること、学習済みと思われるネットワークを破壊すると、その記憶が消去されることがわかった。次に、学習に伴うネットワーク形態変化のしくみと、形態変化に依存した危険橋上での行動の違いのメカニズムを明らかにするために、スタートとゴールの輸送管による接続方法と、スタート上の粘菌厚み振動を調べた。その結果、接続方法はコントロール橋(忌避物質を含まない)と危険橋では異なること、厚み振動は網目状ネットワークが形成された場合の方が大きいことが明らかとなった。以上より、危険橋通過実験においては、学習の記憶形成には輸送管ネットワーク形態が大きく関わることが明らかとなった。 (2) 空間記憶実験:忌避ブロックを等間隔に配置した実験レーンを用意した。忌避ブロックでは粘菌の進行速度は減速するが、3回の刺激経験後、無刺激領域で自発的に減速することが、統計的に確認された。 (3) 輸送管ネットワークによる記憶のメカニズムを明らかにするために、数理モデル構築に着手した。 以上より、当初予定していた計画は順調に進捗したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度は、進捗の欄に示した(2), (3)の項目を実施する。 (2) 空間記憶実験:本項目については、行動の確認まで終了している。(1)の項目で明らかとなった輸送管ネットワークによる記憶が、別のジオラマ環境でも実現するのか、調べる必要がある。そこで、23年度には、周期的空間変化を記憶した粘菌が形成する輸送管ネットワーク形態を調べる。この環境に置かれた粘菌は、レーン上を、忌避領域で減速する。忌避領域は等間隔に3箇所設置されており、そこを通過して空間周期性を学習するものと思われる。第4の仮想的刺激領域(忌避刺激物質はないが、忌避領域と等間隔の領域)において、これまでに自発的減速を確認している。23年度では、粘菌全体の輸送管ネットワークが、記憶形成過程でどのように変化するか観測・定量する。同時に、先端速度のパターン分析、振動解析を行い、輸送管ネットワーク形態の違いから、どのようにして、行動変化を起こすのかそのメカニズムを明らかにすることを目指す。 これまで、周期的時間変化の記憶の存在について、三枝・中垣らによって実証されている。粘菌の時間変化と空間変化の符号化には、関連性があるかも知れない。そこで、周期的時間変化実験についても追試実験を行い、輸送管ネットワーク形態を比較分析し、粘菌が如何にして外界の変動を抽象化するのか調べる。
(3) 数理モデル構築:輸送ネットワークになぜ情報を保持することができるのかを理解するために、数理モデル構築を行う。粘菌輸送管モデルとして手老アルゴリズムが知られている。輸送管の流れに応じて、輸送管が成長する仕組みを取り入れている点に特徴がある。その成長の仕方を表す関数はシグモイド型の非線形型であり、神経細胞の発火モデルのもとのよく似ている。従って、その関連性を調べることで、粘菌における学習と記憶のメカニズムを明らかにできるかも知れない。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)