Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
持続可能性を目標とするとき,生態Ecoと進化Evoに加えて,人間の社会的活動やプロセスSocioを統合した社会-生態-進化連関の枠組みによる研究が新たに求められる。しかし,生態の進化の相互連関だけでも,理論研究や実験室研究によるものに限られており,非制御的・開放系の環境においてその実態と重要性は明らかになっていない。本研究は,環境DNAを新しい手法で活用することによって,種内レベルにおける遺伝・多型情報と種間・生態系レベルにおける情報という異なる階層における多様性情報を統合し,さらにその時空間的変異情報の統合を実現する。加えて,衛星データなどを加えて総合的に解析し,社会-生態-進化連関の実態解明を行う。
複数都市において都市中心から郊外にかけて様々な地点で採集したシロツメクサのジェノタイピングを行った。札幌や旭川ではシアン化水素生成能について明瞭な都市進化が見られることが分かった。一方、釧路や函館でも同様の傾向であったものの空間構造は弱かった。都市化の進行度、および、都市中心から郊外にかけての環境勾配の大きさの違いによるものと考えられた。すなわち、都市化の進行が平行的に都市進化を促進することが、包括的な空間解析によって明らかになった。さらに、このように平行的に生じる都市進化が、シロツメクサに訪花するハチ類の行動への波及性について人工蜜を作成し実験的に検証した。その結果、郊外由来ハナバチはシアン配糖体を含有する蜜もそうでない蜜も選好性を示さなかったが、都市部由来のハナバチはシアン配糖体を含有する蜜に対して選好性を示した。進化的な応答なのか、学習によるものなのかはまだ分かっていないが、植物の都市進化が送粉昆虫の行動に影響を及ぼすという新規な知見が得られた。また、環境DNAを活用した野外での生態ー進化動態の観測においても重要な発展が得られた。6月から10月にかけての毎週の調査によって環境DNAを取得し、メタバーコーディングによって樹上の節足動物群集の構造についてのデータが得られた。さらに同時に、核ゲノムにおける一塩基多型についてもデータの収集ができ、そのアリル頻度に関する時系列データが得られた。このように、環境DNAによって種レベルの多様性情報と、アリル頻度という種内レベルの多様性情報を高頻度で同時に得られたことはきわめて新規性が高い。しかも、時系列モデリングによる因果推論によって、節足動物群集の動態がアリル頻度の時間変化を駆動することが示された。これは、群集が迅速な進化を駆動する証拠であるとともに、昆虫の実サンプルを収集して示された生態ー群集動態のパターンとも合致する。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2024 2023 2022
All Journal Article (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 1 results) Presentation (9 results) (of which Invited: 1 results)
Oikos
Volume: 2024 Issue: 2 Pages: 10210-10210
10.1111/oik.10210