Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
統合生物圏科学が目指すデジタルバイオスフェア構築には、微生物による土壌有機物分解動態の解明が不可欠である。しかし、直接測定の困難な有機物分解を推定可能な簡易かつ汎用的土壌分析手法は確立されていない。現在、風乾土を水に浸し抽出できる水溶性有機物が微生物細胞に由来する可能性が見出されている。さらに風乾土の水溶性有機物に含まれる炭素・窒素の同位体存在比を測定することで、微生物が実際に分解した有機物の生成時期や分解特性を推定できる可能性がある。本研究では、風乾土から水抽出された水溶性有機物やその同位体存在比に着目し、各種陸域生態系における土壌有機物分解動態の推定に利用可能な土壌分析手法の確立を目指す。
最終年度となる2023年度では、北関東の落葉広葉樹林で採取・調整された風乾土壌から水抽出した水溶性有機物(WEOM)の分析結果について取りまとめた研究論文を、国際専門誌(Frontiers in Forests and Global Change誌)に査読付き論文として公表した。本論文では、風乾土WEOMとバルク土壌の安定同位体存在比の差に着目することで、土壌有機物分解において重要な微生物が実際に使用している有機物の生成年代や代謝レベル、また、微生物による基質有機物の同化と異化のバランスなどを推定できる可能性が示された。特に、有機物の安定化作用が高く、基質炭素の利用可能性が低いと思われる土壌では、風乾土WEOMの窒素安定同位体比はバルク土壌よりも高くなる一方、風乾土WEOMの炭素安定同位体比はバルク土壌と同じか低くなる傾向が示された(有機物の安定化作用が低く、基質炭素の利用可能性が高いと思われる土壌では、逆の傾向)。また、国内各地の森林・草地・農地で採取した土壌の風乾土から水抽出したWEOMの分析結果についても、取りまとめを進めており、近日中に論文として、国際専門誌へ投稿できる予定である。これまでの検討により、風乾土のWEOMとクロロホルム燻蒸-抽出法による微生物バイオマスとの相関が炭素と窒素で異なる可能性が出てきた。特に、炭素については、風乾土のWEOMがクロロホルム燻蒸-抽出法で測定された微生物バイオマス炭素の良い代替指標となる可能性が高いことが示された。今後、風乾土から取得された水抽出有機物の分析が土壌有機物分解動態の解明などに応用されていくことが期待される。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022 Other
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (13 results) (of which Int'l Joint Research: 6 results, Invited: 2 results) Remarks (2 results)
Frontiers in Forests and Global Change
Volume: 6 Pages: 1228053-1228053
10.3389/ffgc.2023.1228053
https://digital-biosphere.jp/newsletter-all?fbclid=IwAR2p6QkSSr_d1SEfvc1k5PrcOAlSdfr98Zx1U8kKQn0_C65uA13ItRLlylk
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