Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
巨大な幹の表面CO2フラックスは他の器官と異なり、幹内部の樹液流量や呼吸活性、拡散抵抗など、様々な要因の影響を受けて複雑に変化する。その実態および種、個体による違いを知るために、生態的戦略(陽樹、陰樹、常緑、落葉)の大きく異なる種を対象として、幹内のCO2フラックスを調べる。具体的には、樹液流量や幹内CO2濃度、幹表面CO2フラックスなどを調べることで、樹液流によって輸送されるCO2量、幹内に貯留されるCO2量、幹外に放出されるCO2量をそれぞれ定量し、その種、個体による違いを明らかにする。また、種、個体差を説明する樹木形質を探索する。
幹の呼吸(RS)は幹表面から外部へ放出されるCO2フラックス(EA)と等しいと仮定した研究が多いが、実際には呼吸で発生したCO2の一部は樹液によって幹内部を上部へ輸送される。そのため、EA=RSという従来の仮定は誤差を生じる危険性があるが、樹液による輸送CO2フラックス(FT)を定量した研究は少なく、呼吸量評価に対する影響とFTの大小を決める要因は明らかでない。そこで、様々な温帯性樹種についてFTも含めた幹CO2フラックスを調べ、従来の仮説の妥当性を検証した。生活型の異なる9種(スギ、コナラ、サクラ、ブナ、クヌギ、ケヤキ、クスノキ、タブノキ、シラカシ)について、マスバランスの概念に沿ってEA、FT、幹内の貯留フラックス(DS)を定量し、これらの合計をRSとした。また、このマスバランス法を検証するために、ブナについて樹冠の被陰実験を行い、各フラックスの変化を調べた。RSに占めるFTの割合は、EAの大きい個体および季節ほど大きくなる傾向があった。シラカシなどEAの大きい種や温度の高い夏期では、チェンバー法は幹の呼吸能力を約20~40%過少評価した。また、FTの大きな種では、樹液流の活発で温度の高い日中に幹内部のCO2濃度が低下することでEAが低下し、幹温度との関係は大きなヒステリシスを描いた。従来のチェンバー法は、樹液流の内部CO2輸送により、呼吸量を過小に評価し、呼吸の温度応答を正しく評価できないことがわかった。また、樹冠の被陰実験により、樹液流を停止させてもEAとRSが等しくならない場合があった。ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼによるCO2固定など、FTとは別の内部CO2フラックスの存在が示唆された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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