Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
地球温暖化により、樹木は高温、乾燥化、病虫害などの様々なストレスに直面している。耐性・抵抗性制御機構を担っているサリチル酸、アブシジン酸、ジャスモン酸の3つの植物ホルモンは、拮抗・相乗作用、つまりトリプルトークが存在しており、その結果、実際のストレス応答が制御されている可能性がある。本研究は、食害や傷害を受けた葉から匂いが放出され、被害を受けていない健全な他個体がその匂いを受容し反応する「匂いを介した植物間コミュニケーション」に着目し、匂い受容による植物のストレス応答トリプルトークの解明を目的とする。乾燥化と匂い受容実験により、植物ホルモンと遺伝子の発現という樹木の応答を明らかにする。
樹木は高温、乾燥化、病虫害など様々なストレスに直面している。ストレス抵抗性制御機構を担っているサリチル酸、アブシジン酸、ジャスモン酸は、独立ではなく、拮抗・相乗作用、つまりトリプルトークが存在しており、その結果植物の実際のストレス応答が決まると考えられる。また、食害や傷害を受けた葉から匂いが放出され、被害を受けていない健全な他個体がその匂いを受容すると、防衛力が高まり、被害率が低くなるという「匂いを介した植物間コミュニケーション」が近年注目されている。つまり匂いを介してストレス応答が森林内に拡散していく可能性がある。本研究は、実際の森林内における気候変動による植物応答の解明にむけて、匂い受容による植物のストレス応答トリプルトークを明らかにするため、遺伝子レベル・葉レベルで起きている、乾燥化と匂いの受容による複合的な応答機構に着目し、ブナの稚樹を用い操作実験を行った。サリチル酸とアブシジン酸の定量を理化学研究所との共同研究で実施した。乾燥化処理+葉切除、乾燥化、葉切除、コントロールの4処理を行い、放出されるVOCsの組成を調べた。葉から放出される20種類のVOCsを同定し、多変量解析した結果、VOCsの組成は処理によって異なり、さらに時間的にも変化した。次に、葉の切除特異的なVOCsを受容した場合、防衛に関わるホルモンが蓄積するのかを検証した。その結果、葉を切除特異的なVOCsを受容した個体のサリチル酸が蓄積した。一方、未切除のVOCsを曝露した場合には蓄積しなかった。乾燥処理下でも、葉切除特異的なVOCsを受容した場合、サリチル酸を蓄積することがわかった。また、アブシジン酸は乾燥化処理をした稚樹で上昇していた。以上のことから、乾燥環境下においても、VOCsを介した植物間コミュニケーションは駆動することが明らかになった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2024
All Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)