Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
温暖化により長期間土壌に蓄積している難分解性の有機物が分解されると、土壌の炭素貯留能が低下し、炭素循環のバランスが崩れて地球温暖化に拍車がかかるおそれがある。本研究では、10年以上の長期に渡り温暖化操作実験を実施している5ヶ所の土壌特性の異なる森林を対象として、土壌中に長期間安定に存在している有機物に対して温暖化が与える影響を炭素安定及び放射性同位体の深度分布測定と、炭素蓄積年代及び放出起源推定解析を基に定量的に評価する。
森林土壌には数百年から数千年以上の長期間安定に存在する有機物が存在している。地球温暖化の影響で長期間滞留している土壌有機物の分解が加速し二酸化炭素として放出されると、土壌の炭素貯留能が損なわれ、地球の炭素循環のバランスが崩れる可能性がある。本研究では温暖化操作実験を10年以上実施している国内5カ所の森林(宮崎、広島、つくば、白神、天塩)において、微生物呼吸(土壌有機物の微生物分解により放出される二酸化炭素)の安定及び放射性炭素同位体比を対照区と温暖化区で測定・比較することで、温暖化による炭素年代の変化を調べた。また、表層リター及び土壌有機物の安定及び放射性炭素同位体比の深度分布を測定し、微生物呼吸の結果と比較することで、微生物呼吸の起源を推定した。結果として、微生物呼吸起源とその温暖化影響は、北海道の天塩サイトとその他4サイトで大きく異なった。天塩サイト以外では表層リターに近い比較的新しい炭素が微生物呼吸の主な起源であり、温暖化操作によって微生物呼吸量は増加するものの、その炭素年代は変化しなかった。これらのサイトでは、温暖化の進行により鉱物土壌層への新しい有機物の供給が低下することで、土壌有機物の蓄積量が低下することが考えられる。一方で、泥炭土壌で炭素含有量の高い天塩サイトでは、微生物呼吸として数百年で代謝回転する古い炭素が放出されており、温暖化に伴う土壌水分の低下と微生物活動の活発化により、深い層のより古い有機物の分解が促進されることが明らかとなった。天塩サイトでは他のサイトに比較して温暖化に伴う炭素放出量の増加率が高いことが観測されていたが、その要因が長期間蓄積している古い有機物の分解に起因することを本研究により示すことができた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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https://digital-biosphere.jp/report/1099
https://digital-biosphere.jp/report/2859