Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
既に独自にスクリーニングしたシロイヌナズナ5種類のミトコンドリア形態突然変異体(ミトコンドリア凝集・偏在・不揃い・伸長・短縮)について、原因遺伝子を同定し、うち三つに関してはコードしているタンパク質の分子生物学的解析を行った。ミトコンドリア凝集変異体は、ある環境条件によって大きく変動することを発見し、その生物学的な意義を明らかにした。同様の変異表現型を示す遺伝子との相互作用について検討している。ミトコンドリア細胞内偏在の変異体の原因遺伝子はRHD3(根毛形態形成の突然変異体Root-hair defective 3)であり、この突然変異体の根毛は異常に短く縮れていた。原因遺伝子産物RHD3はミトコンドリアではなく小胞体に局在しており、rhd3変異体における"ミトコンドリアが細胞内偏在する"という表現型は、小胞体の形態変化から引き起こされた二次的影響である可能性が考えられた。三つ目のミトコンドリア形態不揃い変異体の原因遺伝子は未知の遺伝子であり、遺伝子産物は何らかの酵素だと考えられる。この酵素がミトコンドリアへ局在することを実験的に確認した。この酵素のオルソログと思われる配列(細胞内局在もミトコンドリアと予測される)が、高等植物に限らず、酵母やヒトを含む哺乳類にも広く存在している。また、この不揃い突然変異体には原因遺伝子の異なる変異体が存在し、次世代シークエンスを用いて、候補遺伝子を同定した。現在相補性検定などで確認中である。また、同様にミトコンドリアの伸長・短縮突然変異体について、その原因遺伝子を同定した。ミトコンドリア分裂が細胞分裂と同調している可能性について、中国のグループと共同研究した成果が、本年度論文として掲載された。細胞周期に応じてDRP3Aをリン酸化させ、ミトコンドリアは細胞と同調した分裂増殖が行われていることが明らかとなった。
1: Research has progressed more than it was originally planned.
当初目的通り、多数の突然変異体の原因遺伝子を同定することが出来た。それら遺伝子について、相補性検定や、細胞内局在性の検討など、計画していた実験はおおむね遂行することができた。また、突然変異体の新たな側面(環境刺激応答性)という興味深い現象を見いだすことができ、植物ミトコンドリア形態の知られざる一面を垣間見ることができ、またこの現象は今後の解析に大きく寄与するものと考えられるため、当初の計画以上に研究が進展したといえる。
同定した突然変異体、並びにその原因遺伝子の分子実態とその作用機序を明らかにすることで、植物ミトコンドリアの維持増殖過程を明らかにしていく。今後は多様な植物での保存性を明らかにするとともに、これらの因子の相互作用因子を明らかにすることで研究の進展が見込まれる。また、環境刺激に応答する植物細胞において、ミトコンドリアとその形態変化がどのように寄与しているかについても研究課題が明らかとなったので、これらを解明していきたい。
All 2012 2011
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (6 results)
The Plant Journal
Volume: 72 Issue: 1 Pages: 43-56
10.1111/j.1365-313x.2012.05052.x