Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
本研究では、北海道東部の白滝遺跡群から得られた石刃・細石刃剥離にかかわる後期旧石器時代の接合資料を対象として、接合資料をもたらした割り手の技量差の判定を試み、それに基づいて技術の学習過程を明らかにすることを目指した。本年度は、上白滝2遺跡、服部台2遺跡、上白滝8遺跡、旧白滝15遺跡から得られた接合資料の分析に取り組んだ。これまでの研究において割り手の技量差を反映する指標として重視されてきた、石刃剥離過程の諸特徴や資料の出土位置のパターンの分析のみならず、選択された原石形状、石刃・石刃核の遺跡での欠落状況などについても検討をおこない、接合資料間での相対的な技量差を明らかにした。その結果から、上級者による「教育的デモンストレーション」や初級者による「観察学習」が執り行われていたことが推定された。これまでの研究では、一つの石器接合資料をもたらした割り手は一貫して同一であることが前提であった。しかし、旧白滝15遺跡で確認された接合資料の分析に着手した結果、割り手が交替していることを示唆するものが含まれていたことが明らかとなった。分析の結果、剥離過程の途中から割り手の技量が明瞭に変化していることが把握できたため、割り手の交替(上級者→初級者)という推定が導かれることとなった。この事例に関しては、上級者による剥離作業の産物を初心者が練習用の材料としていたことが推定された。 以上の成果から、a)旧石器時代において石器製作にかかわる学習行動が執り行われるには、白滝遺跡群のような潤沢な石器石材環境が必要であった、という想定が導かれる。また、b)白滝遺跡群に訪れ、石器製作作業をおこなった一員のなかには、初級者すなわち子供もしくは若年層が含まれていたとの推定から、遊動スケジュールのなかでどのような集団構成が遺跡群の形成にかかわっていたのか、を推測することが可能となった。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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考古資料に基づく旧人・新人の学習行動の実証的研究
Volume: 3 Pages: 78-86