Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
平成23年度はチンパンジーの顔知覚様式および、経験が彼らの知覚様式に与える影響を分析した。まず、若齢群(約10歳)と、高齢群(約30歳)の2群のチンパンジーを対象に遅延見本合わせ課題を用いて、チンパンジーおよびヒトの顔写真弁別を訓練した。被験体は群れで飼育されており、初期経験は同種他個体に高い比重が置かれている。つまり、知覚的狭小化は同種に対して生じると考えられる。一方で、飼育下での同種他個体数は限定的であるのに対し、ヒトに対しては継続的に接触数が増えるため、長期的な経験量はチンパンジーを凌駕する。実験の結果、若齢群はチンパンジーの顔弁別においてより高い成績を示したのに対して、高齢群はヒトの顔弁別においてより高い成績を示した。知覚的狭小化の効果が10歳までは少なくとも影響しているが、その後ヒトの顔に対し効率よく処理するように顔知覚処理様式が変容していくことを示唆している。続いて、顔処理の半球優位性を分析するため、顔写真を真ん中で左右に2分割し、それぞれを反転させたものを合成することで、左視野情報のみから構成される左キメラ顔と、右視野情報のみから構成される右キメラ顔を作成した。元画像を見本刺激とし、その後の選択肢に左キメラ顔と右キメラ顔を呈示した。その結果、すべての被験体が左キメラ顔を右キメラ顔よりも有意に多く選択した。これは、顔処理時に、左視野情報が右視野情報よりも重みを持っていることを意味しており、脳の右半球が優位に用いられていることを示唆している。また、この反応バイアスは彼らが弁別が得意な対象ほど強く出ることも分かった。すなわち、若齢群はチンパンジーの顔弁別時に、高齢群はヒトの顔弁別時により強い反応バイアスを示した。これは、長期経験により彼らの顔知覚様式がチンパンジーの顔処理に特化したものから、ヒトの顔処理に特化したものへと変容していることを支持する。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
当初予定していた顔の全体処理及び、経験の効果について順調にデータが取得できている。さらに、初期経験のみならず、長期経験の効果に関するデータを獲得でき、さらにコンピュテーショナルシュミレーションをもちいてそれぞれの貢献度を分離できたことは大きな成果であった。現在平成23年度の結果について論文をまとめ、査読を受けている。以上により申請した研究に関しては順調に進んでいるといえる。
これまでのところデータの取得は順調に進んでおり、本年度は必要な追加データを取得すると共に、研究計画のうちまだ未遂行である顔の動的処理様式の分析をおこなう。
All 2012 2011
All Presentation (4 results)