Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
Slit-Roboシグナル経路は生体内における血管のネットワーク形成においてその重要性が示唆されているが、個々の細胞においてどのような生理機能に影響を及ぼしているのかは不明な点が多い。本研究では細胞レベルでのSlit-Roboシグナル経路の役割を明らかにすることを目的とし、その下流因子のひとつであるsrGAP1の機能解析を行った。srGAP1の細胞内局在を検討したところ、運動先端で形成される膜突起ラメリポディアの先端に強く濃縮していることが分かった。srGAP1は複数の機能ドメインから構成される分子であるが、そのN末端側に存在するF-BAR-FXユニットを介して形質膜を構成するリン脂質や低分子量G蛋白質Racの活性化型に結合することで、ラメリポディアへと運ばれている。srGAP1がもつGAP活性の特異性を検討したところRac特異的なGAPであったことから、srGAP1はRacの活性化により運動先端へと運ばれ、その領域におけるRac活性を負に制御すると考えられた。そこで次に内在性のsrGAP1の発現をRNA干渉法により抑制し、そのときのRac活性をFRET法を用いたライブイメージングにより検討した。通常運動先端では細胞内の他の領域と比較してRac活性の亢進が認められるが、srGAP1の発現を抑制した細胞ではRac活性が亢進している領域が広がっていた。こうしたRac活性分布の変化によりラメリポディアの安定性が増加し、細胞がもつ運動の特性に変化が生じた。これらの結果からsrGAP1はRac活性の調節を介して細胞運動を制御していることが明らかとなった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。