直感的信頼の高齢者優位性-国や実験課題・分析法を越えた頑健性に関する検討
Publicly Offered Research
Project Area | Lifelong sciences: Reconceptualization of development and aging in the super aging society |
Project/Area Number |
23H03878
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (I)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 敦命 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80547498)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
|
Budget Amount *help |
¥6,110,000 (Direct Cost: ¥4,700,000、Indirect Cost: ¥1,410,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
|
Keywords | 生涯学 / エイジング / 直感的信頼 |
Outline of Research at the Start |
人間は他者が信頼できるか否かを顔つきなどから直感的に判断する。最近の研究で、研究代表者は顔に基づく直感的信頼を高齢者、中年者、若年者の間で比較し、高齢者の直感的信頼が中年者、若年者よりも正確性と最適性に優れることを示す結果を得た。本研究では、こうした加齢に伴う直感的信頼の正確性・最適性の向上が、顔写真、参加者集団、課題・分析方法などの違いによらず観測できる頑健な現象であるかを心理学実験によって多角的に検証する。高齢者の優れた社会的認知能力を詳らかにする本研究は、当該研究領域「生涯学の創出」が目指す「『成長から衰退へ』という固定的で単純な加齢観の刷新」に貢献すると期待される。
|
Outline of Annual Research Achievements |
人間は他者が信頼できるか否かを顔つきなどから直感的に判断する。最近の研究で、研究代表者は顔に基づく直感的信頼を高齢者、中年者、若年者の間で比較し、高齢者の直感的信頼が中年者、若年者よりも正確性が高く、他者を信頼しないバイアス(不信バイアス)が小さいことを示す結果を得た(鈴木他, 2022)。ただし、この研究は特定の顔写真(日本人若年成人男性)・参加者集団(日本人成人)を用い、最も基本的な信号検出理論分析(信号と雑音の等分散性を所与とした分析)に依拠する点で、知見の頑健性は不明である。そこで、本研究では、直感的信頼の正確性と不信バイアスの年齢関連差が、顔写真、参加者集団、課題・分析方法などの違いによらず頑健に再現できるかを心理学実験によって多角的に検証することを研究期間全体としての目標としている。2023年度においては、アメリカ人中高年男性政治家の顔画像(信頼性の外的基準は汚職歴の有無)を用いてイギリス人若年者・高齢者を参加者とするオンライン実験を行った。実験の結果、顔に基づいて他者を信頼する傾向は若年者より高齢者で高いことが観測された。ただし、こうした年齢関連差は、高齢者の信頼バイアスよりも若年者の不信バイアスを反映したものであることが分析から示唆された。加えて、顔に基づく信頼性判断の正確性は、概して高くないものの、若年者より高齢者で高かった。以上の結果は、鈴木他 (2022)を概ね再現するものであり、直感的信頼の正確性と不信バイアスの年齢関連差の顔写真・参加者集団・課題の違いによらない頑健性を示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の研究では、イギリス人若年者・高齢者を参加者として、顔に基づく直感的信頼の正確性と不信バイアスの年齢関連差を検討するオンライン実験を行った。実験参加者が取り組む主要な課題は、アメリカ人中高年政治家の顔写真(合計40枚)を見て、顔写真の人物の信頼性を6段階(1. Extremely untrustworthy-6. Extremely trustworthy)で評価する顔信頼性判断課題であった。顔写真の人物の半数には汚職歴がある一方、残り半数には汚職歴がなく、汚職歴のある政治家に対する信頼できないという評価(1-3の評価)をヒット、汚職歴のない政治家に対する信頼できないという評価をフォールスアラームとして、信号検出理論に基づいてd'とCを算出した。分析の結果、d’の平均値は高齢者>若年者>0、Cの平均値は高齢者>0>若年者であった。Cの平均値の絶対値は高齢者の方が若年者よりも小さかった。以上の結果は、高齢者の直感的信頼が若年者よりも正確性が高く、不信バイアスが弱いことを示すものである。以上の研究は、直感的信頼の正確性と不信バイアスの年齢関連差の頑健性を検証するという研究目標に沿ったものであり、かつ、興味深い研究知見も得られたことから、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、直感的信頼の正確性と不信バイアスの年齢関連差に関する知見を詳細な分析の後にまとめると同時に、そうした年齢関連差の背後にあるメカニズムを探る分析と実験を行う。 2023年度の実験について現在までに行った分析は、信号と雑音の等分散性を所与とした最も基本的な信号検出理論に依拠する。しかし、当該実験では信頼性判断が6件法で行われており、信号と雑音の等分散性を前提としない信号検出理論による発展的な分析が可能である。2024年度には、そうした詳細なデータ分析を行った上で、高齢者の直感的信頼がより若い世代よりも正確性が高く、不信バイアスが弱いという日英で共通に観測された実験結果を論文にまとめる。 メカニズムについては、これまでの実験から、高齢者の直感的信頼における不信バイアスの低さは、高齢者の一般的信頼(他者一般がどの程度信頼できるかに関する信念)と道義的信頼(他者を信頼することが礼儀だという規範意識)の高さに関連するという示唆を得ている。しかし、高齢者の直感的信頼の正確性の高さが何を反映しているのかはまだわかっていない。そこで、まずこれまでに得たデータを用い、直感的信頼におけるステレオタイプ的な判断の強さ(感度)とそこからの逸脱度合い(独自度)を参加者ごとに推定するextended Social Relations Modelに基づく分析を行う。そして、直感的信頼の感度と独自度を高齢者・若年者間で比較し、高齢者の直感的信頼の正確性の高さが感度に関係しているのか、独自度に関係しているのかを調べる。また、得られた分析結果の再現性を検証するため、日本人の高齢者と若年者を対象とした顔信頼性判断の実験を新たに実施する。以上の分析・実験により、高齢者における直感的信頼の正確性の高さが高齢者独自の判断ストラテジーを反映したものなのかどうかを検討する。
|
Report
(1 results)
Research Products
(3 results)