Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
縮小・高齢社会においても、地方の地域社会は一定のレジリエンスを有している。ここで、高齢者は地域社会の主体的担い手としてそのレジリエンシーに貢献するものと考えられる。本研究では、地域社会のコミュニティ特性と高齢者の地域社会貢献活動との連関を分析するために、地域史と生活史の調査を中心とした質的混合調査法を取る。主な対象とするのは「旧街道筋の伝統的地域社会」、「1970年代造成のニュータウン」、「旧鉱業/現酪農・漁業村落」という三様の3地域である。
滋賀県栗東市の伝統的地域社会と甲賀市の1970年代に造成されたニュータウンでの調査を継続し、その結果を分析し、発表した。第一に、伝統的地域社会においては、現在も続く民俗行事が、人びとの地域社会への社会化を促し保持してきた側面があった。しかし、子どもと地域社会をつなぐ機能や、大人たちが交流を深める機能、あるいは地域の人びとが共通に想起可能な集合的記憶を創出する機能は相当程度に失われた。それらの民俗行事は個別には失われるとしても、価値観の異なる者同士が同じ地域内で共生するための、さまざまな工夫が埋め込まれたレパートリーであると評価した。幼少期からそれらのレパートリーを体験してきた高齢者には、共生社会のためのレパートリーが身体化しており、それを言語化・再評価することに努めた。第二に、ニュータウンにおいては、造成初期の流入者は既に高齢になり、退職しており、地域での様々な活動に参加していた。彼らのライフヒストリーからは、会社員や主婦などの多様な経験が、実際には地域での活動に生かされているにもかかわらず、主観的には断絶した経験になっていることがわかった。たとえば、民俗のようなレパートリーが活用できないため、組織作りにおいては会社での組合運動の経験が援用されることもあった。自治会や自治振興会(まちづくり協議会)が、組織原理・構成も含めて見直しを経て、高齢者以外が役員に就いたり改革を推進したりしている様子が確認された。高齢者の知識や経験は、社会の変化が大幅に変わる時代においては活用しづらいとの見解もある中、本研究においては、高齢者の知識や経験が今の時代においてもなお、共生のレパートリーから重要なエッセンスを抽出したり、レパートリーを創出したりするのに有用であることを示唆している。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
研究計画通りに調査・分析を遂行し、学会発表、学術誌での論文掲載、一般講演等を一定数行えた。それに加え、パブリック・ヒューマニティーズの文脈から研究自体の位置づけを明確にし、そのことについても合わせて論文として刊行できた。
当初予定通りに計画を遂行する。
All 2024 2023
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 2 results) Presentation (10 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results, Invited: 3 results)
The KeMCo Review
Volume: (2) Pages: 10-28
Art Research
Volume: 24(1) Pages: 3-18