Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
北海道島における縄文/弥生移行期並行期の土器を対象にレプリカ法(土器に形成された圧痕のレプリカをシリコンで型取り走査型電子顕微鏡で観察して種実の分類群を同定する方法)による圧痕調査を行い、北海道島内でも特に植物利用の変遷を検討するデータに乏しい道東・道北の植物利用の変遷を検討する基礎データを構築する。縄文/弥生移行期は、本州島では穀物利用開始期として位置づけられておりその地域差が議論されてきた。本研究で整備した基礎的データと道央での植物利用の先行研究をもとに北海道島における植物利用の推移の傾向や地域的特徴を把握し、本州島と比較することで日本列島内の植物利用の変遷史に北海道島を位置づける。
北海道島における縄文/弥生時代移行期とその並行期における植物利用の状況を明らかにするために、北海道東部の美幌町、根室市、北見市で出土した資料に対してレプリカ法による土器圧痕調査を行った。主な対象時期(縄文時代晩期~続縄文時代前半)と前後する縄文時代早期~後期、続縄文時代後半・オホーツク文化期(弥生時代後半期~古墳時代並行期)、擦文文化期(奈良・平安時代並行期)も含めた通時的な圧痕データを得ることで北海道島における植物利用の時間的変化を把握することが可能となると考え、縄文時代早期~擦文文化期の土器を対象に調査を行った。また、縄文/弥生移行期とその並行期前後の隣接地域の状況と比較することで北海道の状況を北日本の中に位置付けるために、東北北部の岩手県奥州市や関東地方の千葉県市川市でもレプリカ法による土器圧痕調査を行った。調査の成果は下記の通りである。北海道島における縄文時代~続縄文時代の土器からは穀類(オオムギ・コムギ・イネ・アワ・キビ)の圧痕は検出されていない。穀類の圧痕が検出されるのは擦文文化期以降であり、道東部では10世紀~12世紀における土器からキビの圧痕が検出されている。縄文後期~続縄文前半期の土器からは種実の圧痕は現時点では確認されていない。成果の一部は報告を行った。北日本における縄文時代から擦文文化期における炭化種実を資料とした先行研究を整理することで、通時的な植物利用のあり方の現状での到達点を確認した。同時に、炭化種実の報告例が少ない地域を把握する結果となり、レプリカ法による土器圧痕調査を実施することが特に有効な地域を見出すことができた。次年度は、この作業で抽出された地域において土器圧痕調査を実施することを企図し、該当地域における調査対象資料の選定とその資料の所蔵先との調査の調整を行った。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
2023年度の研究開始時に予定していたレプリカ法による土器圧痕調査はほぼ実施することができた。採取したレプリカ試料の植物学的な同定作業は研究協力者とともに進めている。調査成果の一部は博物館・埋文センターの刊行物に報告することができた。北海道における炭化種実を対象とした先行研究の整理を行った結果、土器圧痕と炭化種実を対比することが可能となった。これらの作業により、2024年度の考察や研究のまとめへの準備も進んでいる。以上から、おおむね順調に研究が進展していると言える。
2024年度は前年度に引き続き、レプリカ法による土器圧痕調査を実施することで土器圧痕データの拡充をはかり、北海道における縄文/弥生移行期の並行期における植物利用のあり方を検討する基礎データを整備する。調査対象予定地域は、根室市、北見市、美幌町、北上市、横手市である。圧痕の同定作業も進め、採取したレプリカ試料すべての同定を年度上半期には完了する予定であり、データが揃い次第、データの対比や考察を行う。最終年度となるので得られた圧痕データと炭化種実のデータを総合的に検討し、北日本における先史・古代の植物利用の通時的な変遷と画期を検討し、その中に北海道島の縄文/弥生移行期とその並行期を位置付け、課題の解明を行う。
All 2024
All Journal Article (3 results) Presentation (1 results)
北上市立埋蔵文化財センター紀要
Volume: 8 Pages: 39-58
美幌博物館研究報告
Volume: 31 Pages: 9-22
国指定史跡曽谷貝塚総括報告書
Volume: なし Pages: 152-158