Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
本研究は、貝塚形成初期の縄文時代早期における遊動・半定住・定住といった人間活動の復元モデルの提示である。放射性炭素年代測定と貝殻の成長線を用いることにより、年代と採取季節を明らかにして、遺跡における人間活動の季節を推定することで、遊動・半定住・定住の転換を考える。本研究では①定住に関する学史の整理、②年代測定と季節分析の事例を集成、③高精度年代測定と季節分析の実施を、関東、瀬戸内海、有明海の3地域の縄文時代早期貝塚の試料で実施する。貝殻から得られる情報は、本研究で完結するものではなく、当該研究領域の土器研究の情報を取り組むことで相乗的に新たな人間活動復元モデルを本研究では構築したい。
本研究では、定住型狩猟採集民の理解のため、人類学と考古学における定住に関する学史の整理をおこなった。また、その成立モデルを構築するために、定住の初期段階を把握するため、これまでに実施してきた年代測定と季節分析の事例を集成および新たに高精度な年代測定と季節分析の実施および方法論の改善をおこなった。定住に関する学史の整理にあたり、定住の定義として、ネズミの存在が一示標になる可能性があることから、その方法として従来の動物考古学的アプローチによる出土事例の蓄積と新たに土器に残るネズミの咬み痕の有効性を指摘でき、日本動物考古学会第10回大会で発表した。これまでに実施してきた年代測定と季節分析の事例を集成および新たに高精度な年代測定と季節分析の実施の結果、古環境復元において、いわゆる8.2kaイベントと4.2kaイベントにともなう、貝殻の成長遅滞が指摘でき、定住ないし遊動の転換期におけるその背景を検討する新たな視点が見出された。この成果は、奈良県で開催された第40回日本文化財科学会においてポスター賞に採択された。さらに、これまで測定事例が少例である縄文時代早期および前期貝塚の貝殻を試料とした年代測定をおこなった。貝殻の分析事例の集成により、夏島式期で9930 BP、花輪台式期で9770 BP、花輪台II式で9600 BP、東山式で9565 BPと整理できた。また本研究により、子母口式で8310 BP、野島式で7980 BPと7870 BP、茅山下層式で7630 BP、茅山上層式で7455 BP、関山II式で6200 BPの年代値が得られた。海洋リザーバーやローカルリザーバーを検討するうえでの基礎データの集成できた。その結果、遺跡の下位に埋蔵する化石由来のリザーバーの可能性を新たに指摘できた。
3: Progress in research has been slightly delayed.
当初の予定のとおり、関東地方の初期貝塚の年代値を収集できた、早期中葉や早期末葉、前期初頭の一時期においては、土器の実見等まではおこなったが、分析可能な試料が乏しく、その実態が把握できていない。季節分析について、過去のデータの集成および整理、新たなサンプリグができたが、解析および分析がやや遅れている。
定住型狩猟採集民の成立の年代を明らかにするために、引き続き、縄文時代早期末葉から前期初頭の年代値を再整理および新たな試料で分析を行う予定である。今年度に集成および測定した試料の年代については、較正をおこない、絶対年代を算出し、特に縄文時代早期および前期の土器の広域編年等に応用する。また縄文時代早期および前期の海洋リザーバーやローカルリザーバーを算出する。今年度、新たに測定した試料を用いて季節分析をおこない、より高精度な時間軸での貝採取を中心とする遺跡の利用を明らかにすることで、定住および遊動などの生業の変化から成立モデルを試案したい。
All 2024 2023
All Journal Article (4 results) Presentation (5 results)
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Volume: 46
海浜集落からみた王権と地域 発表要旨集
Volume: 26