Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
国民国家において「管理すべき対象」とみなされ、マイノリティの側に置かれがちな移民が、受入社会における人間関係を主体的に作るとはどういうことか。移民自らがいかに関係作りの意味づけを行うかを、ポジショナリティの概念を用いて背後にある権力関係を踏まえつつ考察することで、「主体的」である様がみえてくるのではないか。本研究では、1917年のロシア革命を機にヴォルガ・ウラル地域から日本・満洲・朝鮮半島に渡り、1950~60年代にトルコや米国へと再移住したタタール移民に着目する。語りに基づき、戦前日本の国策に取り込まれ、戦後は脱植民地化や国民像構築の波に翻弄された彼らの受入社会との関係性の解明を目指す。
タタール移民は、戦前は国策に取り込まれ、戦後は脱植民地化や国民像の構築・再構築の波に翻弄されながら、複数国家・地域にまたがる世界規模の移動を繰り返してきた。行く先々でマイノリティ性の高い立場に置かれながら、[1]どのように個人の関係性にも作用する権力と向き合い、[2]いかなる関係を作り(あるいは作らず)、[3]一連の出来事の解釈や意味づけを行ってきたのか。また、[4]コネクティビティを巡る語りの背後には、どのような社会・経済・政治・文化的文脈があったのか。本研究の目的は、この4点の分析を通じて、タタール移民による水平方向の関係作りの実態を明らかにすることである。2023年度は、11月のトルコ調査(イスタンブルおよびアンカラ)を中心にインタビュー・データの収集を行うとともに、日本移民学会第33回年次大会、ISA Asia-Pacific 2023 Conference、The 3rd Islamic Trust Studies International Conference "Exploring the Tacit Knowledge of Trust Building and Connectivity amidst Predicaments"での中間報告とフィードバックをふまえつつ、『イスラームからつなぐ4移民・難民のコネクティビティ』(黒木英充編、2024年、東京大学出版会)にて現時点までの成果をまとめた。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
2023年度は、トルコでの1か月にわたる調査に加えて、複数回におよぶ学会・国際会議での発表、書籍での成果報告を実施したため、おおむね順調に進展しているといえる。
データ収集、データ分析、成果報告を往復することで、フィードバックに基づく議論の深化を目指す。当該研究領域の研究会と、日本移民学会(6月頃)、アメリカオーラルヒストリー学会(10月頃オハイオ)の各年次大会に参加すると共に、トルコにおいて当該研究領域に携わる研究者を訪問し、意見交換を行う。なお、治安情勢や感染状況により海外渡航が困難となる場合には、オンライン・ミーティングを活用しつつ、戦前の居住地であった東京、神戸、名古屋、久留米を舞台にしたコネクティビティの検討に軸足を移し、国内での史資料調査を重点的に実施する。
All 2024 2023
All Presentation (5 results) (of which Int'l Joint Research: 4 results) Book (3 results)