Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
イスラーム諸国は、イスラームという宗教そのものを人権侵害と結びつける言説を退けることによって対外的な信頼構築を図る必要性に迫られてきた。そのような言説は、イスラーム世界全体への信頼を損ない、人権侵害を理由とした経済的・軍事的介入を招くリスクにもなりうるからである。こうした言説を否定する際に、世俗主義的な立場から宗教にもとづく暴力を否定するのではなくあくまでもイスラームに基づき「人権」とは何かを再解釈する営みが存在し、その主体はウラマー(イスラーム学者たち)である。本研究は彼らの国際的ネットワークの実態を解明し、イスラーム諸国内外の信頼醸成と合意形成にどのように寄与しうるかを考究するものである。
サウディアラビア、ヨルダン、アラブ首長国連邦などで「人権」を掲げて活動する国際機構、政府組織、NGO等を対象に、その理念や活動内容を調査し、イスラームの立場からの人権規範形成の動態を分析してきた。サウディアラビアのジッダに本部を構える国際機構イスラーム協力機構(OIC)の下部組織である国際イスラーム法学アカデミー(IIFA)の決議分析や、ヨルダンの人権活動組織、アラブ首長国連邦の諸組織でのインタビュー調査を行った。ヨルダンでのフィールドワークでは、人権団体によるガザへの人道支援についてデータが得られ、そのデータの一部は論文「ガザ危機が揺るがすヨルダンの安全保障:2023 年10月7日以降のパレスチナ問題対応」にまとめた。国際学会等でも成果公開を行った。イスラーム協力機構(OIC)において、イスラーム法学者らや政治家たちの間でイスラームに基づく規範の相互交渉が見られる事例については、英国中東学会(The BRISMES (The British Society for Middle Eastern Studies) Annual Conference 2024)で口頭発表を行った。OICにおいてアフガニスタンなどへの人道支援の必要性について合意形成が行われ、実際にそれが経済援助の形で実行に移された事例については、The Middle East Studies Association (MESA) 58th Annual Meetingにて口頭発表を行った。第4回イスラーム信頼学国際会議“Overcoming the Divide: Connectivity and Trust Building for Middle East Peace”においては、人権活動を行う諸団体の地域的・国際的ネットワークの働きと中東諸国の法改正の動きが絡み合う動態について、ポスター発表を行った。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
ヨルダンとアラブ首長国連邦で「人権」を掲げて活動する政府組織、NGOなどを対象に行ったフィールドワーク、インタビュー調査では、現地でしか得られないデータ・資料を得ることができた。また、得られたデータの分析・検討を進め、その結果については論文や学会発表の形で国内外において成果公開を行った。
次年度には、本研究のとりまとめを行うとともに、イスラーム諸国の立場からの人権規範形成の動態について、論文にまとめて投稿を行う。
All 2024 Other
All Journal Article (1 results) Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results) Remarks (1 results)
中東研究
Volume: 551 Pages: 32-43
https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/asia_map_vol02/saudi/essay01/