Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
有機太陽電池では、ドナーとアクセプターの界面を使って励起子を解離して発電する。近年開発された非フラーレンアクセプターでは、励起子の解離に必要なエネルギーが極めて小さいことで、高い太陽電池性能が得られている。本研究は、非フラーレンアクセプター分子のもつ大きな四重極が励起子解離を容易にしているとの仮説に基づき、吉田が独自に開発した低エネルギー逆光電子分光法により分子の四重極がつくる静電ポテンシャルを測定し、ドナー・アクセプター界面構造との相関を明らかにする。これにより、上記の仮説を実証し、高効率有機太陽電池の設計指針を提案する。
有機太陽電池では、非フラーレンアクセプターの成功により光電変換効率が20%に迫りつつある。代表者らは、非フラーレンアクセプターの四重極が界面付近に静電ポテンシャルを形成し、電荷分離を促進することを示す間接的な証拠を得てきた。しかし、静電ポテンシャルの空間スケールや静電ポテンシャルと四重極の効果の詳細はまだ分からない。そこで、本研究は、界面構造(分子配向、界面形状)を制御し、静電ポテンシャルとの関係を明らかにする。静電ポテンシャルの測定方法としては、代表者がこれまでに開発してきた紫外光電子分光法(UPS)と低エネルギー逆光電子分光法(LEIPS)によるイオン化エネルギーと電子親和力を精密測定する方法を用いる。ドナーとアクセプターの混合比や、製膜条件や分子の側鎖を変えた際の電子準位の微小変化を解析することで、薄膜構造と静電ポテンシャルの影響を明らかにしていく。2023年度は、3つの系を検討した。(1)現在の有機薄膜太陽電池の標準とされるPM6とY6について、混合比と静電エネルギーの関係を測定した。(2)家裕隆教授(大阪大学)のアクセプター(Ph-X、X=H,D,MH)とドナーポリマー(P3HT)を取り上げた。アクセプターの側鎖Xを変えることで表面エネルギーを制御することができ、ドナーとアクセプター界面の構造を制御できる。(3)山田容子教授(京都大学)のドナー(Cn-DPP-BP)とアクセプター(PCBM)について、アルキル鎖長nを変えることで、界面構造を制御できる可能性がある。どの系についても、ドナーが表面偏析しやすく、混合比が安定しないという課題があり、X線光電子分光法によるドナーとアクセプター比の測定をしながら、構造制御を試みている。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
現在までの進捗状況の詳細は以下のとおりである。(1)現在の有機薄膜太陽電池の標準であるPM6とY6について、混合比と静電エネルギーの関係を測定した。ドナー・アクセプター混合溶液での混合比を1:9 から9:1までかえていくと、LUMO準位が連続的に変化することが見いだされた。一方で、PM6が表面偏析しやすいことが分かり、XPSによる混合比の決定をすすめている。(2)家裕隆教授(大阪大学)のアクセプター(Ph-X、X=H,D,MH)とドナーポリマー(P3HT)については、アクセプター、ドナー、混合膜(溶液での混合比1:1)の測定を行った。この結果、Ph-XとPh-Dでは薄膜表面がP3HTで覆われていることが分かった。スピンコートで製膜後に膜をはがして裏返すことを試みている。一方、Ph-MHについては、ドナーとアクセプターが観測され、-Hや-Dとは薄膜構造が異なることがわかった。(3)山田容子教授(京都大学)のドナー(Cn-DPP-BP)とアクセプター(PCBM)について。Cn-DPP-BPは、前駆体を溶液法で製膜後に加熱転換するポルフィリン誘導体である。加熱する際に表面偏析し薄膜の凹凸ができるため、UPS・LEIPSによる測定では試料帯電しやすいことが分かってきた。(4)UPS/LEIPS測定に加えて、XPSスペクトルを多変量解析することで、電子準位を精密決定する方法の開発を進めている。多変量解析の方法としては、Principal Component Analysis、Classical Least Squares、Target Factor Analysisを取り上げた。どの方法も、スペクトルの微小な変化を効率的に検出することができる。一方で、測定条件の変化に対しても敏感であるため、実験方法の見直しを同時に進めている。いる。
(1)PM6とY6については、UPSによるHOMO準位の測定を進めていく。LEIPSによるLUMO準位の測定結果と合わせることで、静電エネルギーとドナー・アクセプターの混合比の関係を明らかにしていく。(2)アクセプター(Ph-X、X=H,D,MH)とドナーポリマー(P3HT)については、製膜法の確立を急ぐ。製膜した混合膜をXPSによりドナーとアクセプターの混合比を決定することで、適切な混合比の薄膜が作製できるようにする。その後、UPS・LEIPSによる測定を進めていく。(3)多変量解析については、PM6:Y6混合系の他、3元系への適用を検討していく。
All 2024 2023
All Presentation (5 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results, Invited: 1 results)